2017-03-31
国税不服審判所はこのほど、2016年8月から9月分の裁決事例を同所HP上にある「公表裁決事例要旨」及び「公表裁決事例」に追加し公表した。今回公表された裁決事例は、12事例(国税通則法関係2件、所得税法関係5件、法人税法関係1件、相続税法関係2件、登録免許税法関係1件、消費税法関係1件)となっており、裁決の半数を超える8事例で納税者の主張が何らかの形で認められており、実務家にとっても参考となろう。
このうち、国税通則法関係では、事業所得を秘匿した内容虚偽の所得税の確定申告書の提出など、当初から所得を過少に申告する意図を有していたと認められるものの、請求人が事業所得を秘匿するためにあえて帳簿を作成しなかったとまでは断定し難い上、過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動を見いだすことはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消したものがある。
所得税法関係では、請求人の子会社が複数の外国法人と締結した契約の当事者が、当該子会社ではなく請求人であるとはいえないとした事例がある。締結した契約に係る契約書はいわゆる処分証書に該当し、作成の真正に争いがなく他に特段の事情も認められないことから、請求人が契約当事者であるとはいえないとして、源泉徴収に係る所得税等の各納税告知処分並びに不納付加算税の各賦課決定処分が全部取り消しとなったもの。
消費税法関係では、請求人が所有する物件の賃貸借に係る契約において、賃借人が当該物件を住宅として転貸することが契約書その他において明らかであるとした事例がある。本事例は、消費税法上、非課税とされる住宅の貸付け(消費税法別表第一第13号)には、住宅が転貸借及び再転貸借される場合も含まれると判断したもの。課税期間の消費税等の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す請求を棄却した。
相続税法関係では、審判所認定地域が各土地に係る広大地通達に定める「その地域」に当たると判断した事例がある。本事例は、各土地の地域に係る土地の利用状況及び周辺地域の状況等の事情を総合勘案して、審判所認定地域が各土地に係る広大地通達に定める「その地域」に当たると判断したもので、相続開始に係る相続税の各更正の請求に対する各更正処分を全部取り消している。