2022-08-19
国税庁が先日公表した2021年度租税滞納状況によると、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて新規発生滞納が増加したことなどから、国税の滞納残高が2年連続で増加したことが明らかになった。同庁では、処理の進展が図られない滞納案件については、差押債権取立訴訟や詐害行為取消訴訟といった国が原告となる訴訟を提起したり、滞納処分免脱罪による告発を活用して、積極的に滞納整理に取り組んでいる。
原告訴訟に関しては、2021年度は前年度を13件上回る115件の訴訟を提起。訴訟の内訳は、「供託金取立等」7件、「差押債権取立」5件、「その他(債権届出など)」101件のほか、特に悪質な事案で用いられる「名義変更・詐害行為」が2件。また、財産の隠ぺいなどにより滞納処分の執行を免れようとする悪質な滞納者に対しては、「滞納処分免脱罪」の告発を行うなど、特に厳正に対処。2021年度は、4件(7人(社))を告発している。
悪質な滞納事例をみると、滞納処分の執行を免れるため、事業譲渡につき虚偽の陳述を行い、事業譲渡代金の一部を全額現金で出金するなどして財産を隠ぺいした行為について、国税徴収法違反(滞納処分免脱税)により告発したものがある。滞納会社は飲食店の運営等を目的とする会社だった。滞納会社の代表者は、株式会社Aに対する事業譲渡が成立したにもかかわらず、徴収職員に対し、虚偽の陳述を行ってその事実を隠ぺいした。
さらに、譲渡代金の一部を非公表だった滞納会社名義の普通預金口座に振込入金させた直後に、その全額を現金で出金した上、徴収職員に対し、事業譲渡代金の使途について虚偽の陳述を行うなどした。徴収職員は、これらの行為が滞納処分の執行を免れる目的でされた財産の隠ぺいに該当すると判断して、滞納会社の代表者を国税徴収法違反(滞納処分免脱税)により告発している。
なお、上記の「詐害行為取消訴訟」は、国が、滞納者と第三者との間における債権者(国)を害する法律行為の効力を否定して、滞納者から離脱した財産をその第三者から取り戻して滞納者に復帰させるために行うもの。また、「名義変更訴訟」は、国税債権者である国が、国税債務者である滞納者に代わって、滞納者に帰属しながら滞納者の名義となっていない財産の名義を滞納者名義とすることを求めて提起するものだ。