2022-08-25
2023年10月からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が始まる。東京商工リサーチが8月上旬に実施した「インボイス制度についての企業向けアンケート調査」結果(有効回答数6441社)によると、インボイス制度を「知らない」と回答した企業は7.5%にとどまり、「よく知っている」(9.5%)、「大体知っている」(49.0%)、「少し知っている」(23.9%)を合わせた「知っている」は92.5%に達した。
認知度は高いが、準備や対応は鈍く、まだ半数近く(46.7%)の企業が取引方針を決めていない実態も分かった。一方、税控除ができない免税事業者との取引については、「これまで通り」との回答は4割(41.2%)にとどまり、「取引しない」(9.8%)が約1割、「取引価格を引き下げる」も2.1%あった。また、「検討中」は46.7%と、まだ半数近くは取引方針を迷い、免税事業者への悪影響が広がる可能性もある。
規模別では、「免税事業者とは取引しない」は、大企業6.4%、中小企業10.4%。また、「取引価格を引き下げる」は、大企業1.4%、中小企業2.3%で、取引継続は資金負担が生じることもあり、中小企業のシビアな回答が目立った。一方、「これまで通り」は大企業38.3%、中小企業41.7%。「検討中」は大企業53.8%、中小企業45.5%と大企業では過半以上が検討中で、今後の方針決定で取引関係が大きく変わる可能性がある。
例えば、メーカーのA社が小売業のB社に1万1000円(消費税1000円)で納品し、B社が消費者に1万6500円(消費税1500円)で販売した場合、A社がインボイスを交付しB社が仕入税額控除を行うと1500円から1000円を引いた500円が納付税額となる。だが、A社が免税事業者だと、一定期間の経過措置が設けられているが、B社は控除できず、1500円を納付しなければならないケースが出てくる。
そのためB社は、免税事業者との取引見直しを検討し、今回の調査では約1割の企業が取引を止めると回答した。このように、免税事業者のままだとインボイスを発行できず、売上先は仕入税額を控除できないため納税額が大きくなる。これを避けたい事業者が、免税事業者との取引解消や値下げを要求する懸念が問題となっている。一方で免税事業者が、課税事業者を選択すると消費税の納税義務が生じ、小規模事業者ほど板挟みに苦悩している。
国は免税事業者との取引に配慮し、制度開始から6年間は仕入税額の一部控除が可能とし、また免税事業者との取引を、インボイス制度実施を契機に取引条件を見直すと、優越的地位の乱用として問題にもなりかねないと警鐘を鳴らしている。ただし企業は、基本的に取引先の選択を自由にでき、税負担が増す免税事業者との取引縮小の動きが加速する可能性は高い。混乱が起きないように、事前の支援やフォローが重要になっている。
同調査結果は↓
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220820_02.html