2022-08-26
監査法人の異動件数が、合併による異動の影響を除いて、2015年以降で最多となったことが、金融庁の公認会計士・監査審査会が発表した2022年版モニタリングレポートで明らかになった。監査法人の数は近年増加傾向にある。2022年3月末は276法人だが、2021年4月から2022年3月までの間に、5法人が解散又は合併により消滅し、19法人が設立されたことから、前年同期比で14法人の純増となった。
こうした状況下、2022年6月までの1年間で監査事務所を変更した国内の上場企業は、合併による8件を除き、前年比21件増の228件にのぼり、比較可能な2015年以降で最多となった。監査事務所の規模別では、大手監査法人(トーマツ・あずさ・EY新日本・PwCあらたの社員数約170人~約600人の4大法人)から準大手監査法人(社員数約30人~100人弱の5事務所)以下への異動傾向が続いている。
具体的に、監査事務所の規模別の異動状況をみると、大手から大手への変更などを除いた純増減は大手監査法人が140件減少(前年124件減少)した。これに対して、中小監査法人(社員数~約40人の253事務所)や個人事務所(2060事務所)などの中小規模監査事務所(2367事務所)は109件増加(前年92件増加)しており、大手から中小への異動が目立つ。準大手監査法人は31件増加(前年32件増加)した。
会計監査人の異動理由については、2019年6月期以降、「任期満了」のみを理由とするケースが大幅に減少している。2022年6月期においては、監査報酬の増額提示や継続監査期間の長期化等を異動理由に挙げているケースが多いほか、会社の事業規模に適した監査対応と監査報酬の相当性を他の監査法人と比較検討した結果、監査人の異動に至った旨を記載しているケースが多い。
また、異動前後の監査報酬については、より規模の小さい監査事務所へ異動した場合、監査報酬が減少するケースは約7割。このうち、大手監査法人から中小規模監査事務所への異動でみると、約8割の異動において監査報酬が減少している。なお、監査業務収入の約81%が大手監査法人に集中する寡占傾向にあるが、近年においては、監査証明業務数、監査業務収入等における大手監査法人の割合は減少傾向にある。
2022年版モニタリングレポートの主なポイントは↓
https://www.fsa.go.jp/cpaaob/shinsakensa/kouhyou/20220715/2022_monitoring_report_summary.pdf