2022-09-07
日本政策金融公庫等が取り扱っている「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一時的な業況悪化を来している事業者が一定要件に該当すれば受けられる融資。その後、返済する利子について、中小企業基盤整備機構から最長3年間分の利子相当額の補給を受けることで、事業者の負担する利子が実質的に無利子となる「特別利子補給制度」がある。
法人税の所得金額の計算上、ある収入の収益計上時期については、原則として、その収入すべき権利が確定した日の属する事業年度となるので、通常の利子補給金の収益計上時期についても、原則として、交付決定日の属する事業年度となる。そのため、特別利子補給制度により最長3年分の支払利子相当額の交付を受けた場合には、その全額が交付決定日の属する事業年度の収益として計上しなければならないのかという疑問が生じる。
しかし、この特別利子補給制度は、日本政策金融公庫等の一定の金融機関から融資を受けることを条件に、その融資により発生する支払利子を、最長3年間、実質的に無利子とすることを目的として交付されるものだ。そのため、この特別利子補給制度は、融資契約の変更等により利子相当額が変動した場合には、3年経過後に実際に支払った利子相当額により利子補給額が確定することとされている。
したがって、特別利子補給制度においては、交付決定日には利子補給額が確定していないことから、利子補給額に係る収入を受ける権利は確定していないと考えられる。加えて、3年経過後の実際に支払った利子相当額と利子補給額の精算の手続きは金融機関において行うこととされており、法人において実績報告などの手続きはないので、通常の補助金とは手続き面でも異なる仕組みとなっている。
このようなことから、この特別利子補給制度については、事前に最長3年分の利子相当額の交付を受けるものの、交付を受けた時点では収益として確定せず、支払利子の発生に応じてその発生する支払利子相当額の収益が確定し、無利子化される性質のものと考えられるので、その支払利子(費用)の発生に応じて、その発生する支払利子と同額の収益を計上することとなる。
なお、この場合の会計処理については、交付を受けた利子補給金の額を、一旦「前受金等」として負債の部に計上し、その上で各事業年度において実際に金融機関に支払った利子額の発生に合わせて、その支払利子と同額を「雑収入(利子補給分)」として益金計上し、「前受金」を取り崩していく。その支払利子相当額を前受金等から利子補給金収入等の収益の部に振り替えることとなる。税務上の取扱いも同様である。