2022-09-16
来年10月から消費税の「インボイス制度」が導入されるが、日本商工会議所が発表した「消費税インボイス制度に関する実態調査」では、制度適用に必要な適格請求書(インボイス)発行事業者の登録申請を行った事業者はわずか1割となっていることが明らかになった。この実態調査は、各地商工会議所の会員企業に今年5月23日から6月23日までの期間にヒアリング調査(回答事業者数3771者)を実施して取りまとめたもの。
インボイス制度導入に向けての準備状況は、「特段の準備を行っていない」事業者の割合が全体の42.2%と、昨年同時期の調査(59.9%)からは減少したものの4割を超えている。「請求書等発行システムや経理・受発注システムの入替・改修等を行っている」事業者はわずか7.0%だった。特に、「特段の準備を行っていない」事業者は、売上高1千万円以下の事業者では60.5%にのぼり、小規模な事業者ほど準備が進んでいない実態が判明した。
また、国税庁への適格請求書発行事業者の登録申請状況では、「登録申請した」と回答した事業者は10.5%と1割のみ。特に、売上高1千万円以下の事業者では僅か1.6%に過ぎず、「申請する予定」(11.5%)を含めても13%程度のほか、「取引先から要請があれば検討する」が24.7%、「登録申請は行わない」が23.9%、「制度内容を理解しておらず、検討していない」が21.2%と、全体の半数近くが自主的には申請は行わないようだ。
今後の申請にも大きく左右する制度導入に向けた課題(複数回答)については、最多が「制度が複雑でよく分からない」の47.2%、以下、「発行する請求書等の様式変更」(35.5%)、「仕入先がインボイス発行事業者かの確認」(26%)、「システムの入替・改修コスト」(17.9%)、「消費税を納税しなければならなくなる」(12.2%)などが挙げられるなか、「顧問税理士から指導がなく、何をすべきか分からない」との声も5.4%あった。
一方、インボイス制度導入後の課税事業者の対応予定をみると、約3割(28.4%)の課税事業者が「免税事業者との取引は(一切または一部)行わない」(14.7%)、「経過措置の間は取引を行う」(13.7%)と回答し、免税事業者との取引を見直す意向を示した。そのうち、6割半ば(64.8%)の課税事業者が取引先の免税事業者に対し、「インボイス発行事業者になるよう要請する」としている。
なお、免税事業者が課税転換する際の課題(複数回答)では、「消費税負担により資金繰りが厳しくなる」が62.0%で最も多く、次いで、「消費税分の価格転嫁が難しく、利益が減少する」(44.8%)となっている。また、直近1年間の税引き前利益をみると、免税事業者の4割超(42.9%)が直近の利益が収支均衡以下だったほか、免税事業者の受注・販売先数は44.6%が4社(者)以下で、取引先の減少が経営悪化に直結する可能性が高い。