2017-04-19
2017年度税制改正においては、非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度(事業承継税制)が、人手不足下における納税猶予取消リスク増大への対応のため、拡充されている。それは、(1)自然災害時等の雇用確保要件を免除(一部緩和)、(2)小規模な企業を中心に雇用確保要件を緩和、(3)相続時精算課税制度との併用を認める、(4)生前贈与後に納税猶予が取消となった場合でも、納税額が相続税と同額になる、などだ。
このうち、相続時精算課税制度との併用を認めたことから、生前贈与後の納税猶予中に雇用維持要件等を満たせずに認定が取消しとなった場合でも、納税額が相続税で株式を取得した場合と同額になる。ということは、贈与税の納税猶予が取消になった場合に生じ得る高額な贈与税負担を大幅に軽減することになるので、早期かつ計画的な生前贈与の促進が期待できるとみられている。
相続時精算課税制度は、生前贈与時に2500万円という大型の特別控除と特別控除を上回る金額には一律20%の軽減税率が適用でき、同制度を選択した場合の相続発生時には、生前贈与財産と相続財産を合わせて計算した相続税額から、生前贈与時に納めた贈与税額を控除して精算する。原則として、60歳以上の父母又は祖父母から20歳以上の子や孫に対し、財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度だ。
相続時精算課税制度を選択した場合、相続時発生時に相続財産と合算する贈与財産の価額は「贈与時の価額」とされるが、これまでは贈与税の納税猶予の適用を受ける株式等は相続時精算課税を適用できないことになっていた。それが2017年度税制改正で、相続時精算課税制度に係る贈与が、贈与税の納税猶予の適用対象に追加されたことから、納税猶予取消時に、相続税よりも高額な贈与税を納税しなければならないリスクが解消される。
相続時精算課税との併用によって、納税猶予が取り消された場合でも2500万円までなら取消時に贈与税がかからず、2500万円超の部分も税率は一律20%で済むことになる。株式の評価時期は異なるが、併用によって、納税猶予取消時の税負担を相続で株式を取得した場合の相続税と同レベルまで引き下げることができるので、納税猶予取引時に相続税よりも高額な贈与税を納税するリスクは相当下がることになる。