2017-05-02
2017年5月29日から、全国の登記所(法務局)において、各種相続手続きに利用することができる「法定相続情報証明制度」が運用開始される。現在、相続人は、遺産(不動産や預貯金等)に係る相続手続きに際し、被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍関係の書類等一式を全て揃えた上で、同じ書類を管轄の異なる登記所や各金融機関など、相続手続きを取り扱う各種窓口に何度も出し直す必要がある。
法定相続情報証明制度は、登記所(法務局)に戸籍関係の書類等一式を提出し、併せて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出すれば、登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付する。すると、その後の相続手続きは、法定相続情報一覧図の写しを利用することで、戸籍関係の書類等一式を何度も出し直す必要がなくなる。具体的な手続きについては、法定相続情報証明制度の運用開始に向けて、現在準備中だ。
新制度新設の背景には、不動産の登記名義人(所有者)が死亡した場合、所有権の移転の登記(相続登記)が必要だが、最近は、相続登記が未了のまま放置される不動産が増加しており、これがいわゆる所有者不明土地問題や空き家問題など様々な社会問題の要因となっているとの指摘がある。そこで、相続手続きに係る相続人等の負担軽減や、相続登記を促進するために、法定相続情報証明制度が新設されたわけだ。
新制度においてはまず、相続人又はその代理人が、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍関係の書類等を集め、その記載に基づく被相続人の氏名、最後の住所、生年月日及び死亡年月日並びに相続人の氏名、住所、生年月日及び続柄の情報などを記載した法定相続情報一覧図を作成する。これらの書類を添付した申出を受けた登記官は、内容を確認し、法定相続情報一覧図を保管し、認証文付きの法定相続情報一覧図の写しを交付する。
法定相続情報一覧図の写しは、相続登記の申請手続きを始め、被相続人名義の預金の払戻しなど、様々な相続手続きに利用されることで、相続手続きに係る相続人・手続きの担当部署双方の負担の軽減が期待されている。なお、代理人としては、法定代理人のほか、民法上の親族、資格者代理人(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士に限る)が指定されている。