2023-06-09
食料品などの卸売を行っている事業者が、取引先に対する請求に際して、その請求金額の合計額の端数を値引きすることがあるが(いわゆる「出精値引き」)、インボイス制度(適格請求書等保存方式)においては、請求書の記載について対応が必要となる。課税資産の譲渡等の対価の額の端数を値引きする場合、値引きの時期が課税資産の譲渡等を行う前か後かで対応が分けられる。
具体的には、(1)既に行った課税資産の譲渡等の対価の額に係る値引きである場合、売上に係る対価の返還等として処理する、(2)これから行う課税資産の譲渡等の対価の額に係る値引きである場合、課税資産の譲渡等の対価の額から直接減額して処理する。値引きの時期が課税資産の譲渡等を行う前か後かについて厳密な区分が困難である場合は、(1)と(2)のいずれの処理を行っても差し支えない。
まず、(1)の既に行った課税資産の譲渡等の対価の額の端数の値引きである場合は、その課税資産の譲渡等に対する値引きについては適格返還請求書を交付することとなるが、適格請求書と適格返還請求書のそれぞれの記載事項を満たして一の書類で記載することもできる。この場合、事業者が行う出精値引きは既に行った個々の取引のいずれかに対して値引きを行う性質のものではなく、その請求全体に対して値引きを行うものとなる。
そのため、適格返還請求書の記載事項である「売上に係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容」は、適格請求書の記載事項と同一となることから、記載する必要はない。また、例えば、取引に係る適用税率が単一である場合は、適格返還請求書の記載事項である売上に係る対価の返還等の金額に係る「適用税率」に関しても同様に、適格請求書の記載事項である「適用税率」とは別に記載する必要はない。
次に、(2)のこれから行う課税資産の譲渡等の値引きである場合は、課税資産の譲渡等の対価の額から直接減額して処理することとなるので、適格請求書には、値引き後の対価の額に係る消費税額等の記載が必要となる。また、標準税率及び軽減税率対象の取引を同時に行う場合の出精値引きについては、その出精値引額をその資産の譲渡等の価額の比率によりあん分し、適用税率ごとに区分する必要がある。