2022年度査察、告発率74.1%は2006年度以来の高水準

いわゆるマルサと呼ばれる査察は、脱税でも特に大口・悪質なものが強制調査され検察当局に告発されて刑事罰の対象となる。国税庁が公表した2022年度査察白書によると、同年度に査察で摘発した脱税事件は前年度より30件多い139件で4年ぶりに増加し、その脱税総額は前年度を約25%上回る約128億円だった。今年3月までの1年間(2022年度)に、全国の国税局が査察に着手した件数は145件と、前年度(116件)を29件上回った。

継続事案を含む139件(前年度103件)を処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)し、うち74.1%に当たる103件(同75件)を検察庁に告発。この告発率74.1%は前年度を1.3ポイント上回り、2006年度以来の高水準だった。2022度は、消費税の輸出免税制度を利用した消費税不正受還付事案を16件、自己の所得を秘匿し申告を行わない無申告ほ脱事案を15件、国際事案を25件、それぞれ告発している。

近年、査察における大型事案は減少傾向にあり、2022年度の脱税総額127億6000万円は、ピークの1988年度(約714億円)の約18%にまで減少している。1件当たり平均の脱税額は9200万円で、ここ5年は1億円を下回っている。告発分の脱税総額は前年度を64.9%上回る100億1900万円だったが、前年度は統計が残る1972年度以降、過去最少だった。告発分1件当たり平均の脱税額は9700万円となっている。

告発分を税目別にみると、「法人税」が前年度から4件増の47件で全体の約46%を、脱税総額でも約42.8億円で約43%をそれぞれ占めた。「所得税」は同10件増の19件(脱税総額約24.2億円)、「消費税」は同13件増の34件(同約30.1億円)、「源泉所得税」は同1件減の1件(同約0.2億円)、「相続税」は同2件増の2件(同約2.9億円)。消費税の告発件数のうち16件は消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)のものだった。

告発件数の多かった業種は、「建設業」が22件で2年連続のトップ、次いで「不動産業」が13件、「小売業」が12件で続いた。なお、2022年度の査察では、消費税事案のほか、ウェブサイト上で競艇の予想情報を販売する個人事業者などの無申告事案や外国法人を利用して不正を行っていた大規模な国際事案などを告発し、時流に即した社会的波及効果が高いと見込まれる事案に対しても積極的に取り組んでいる。

同査察白書の概要は↓
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/sasatsu/r04_sasatsu.pdf