所得拡大促進税制、新設法人は上乗せ措置適用できず

<法人税>

所得拡大促進税制は、一定の要件を全て満たした場合に給与総額の増加分の10%を法人税額から控除できる制度だが、2017年度の税制改正で、新たに「前事業年度比2%以上の賃上げ」という要件を設定し、この要件を満たした企業に税額控除の上乗せをする。平均給与等支給額が前事業年度比で2%以上増加した場合、大企業は通常の10%に2%を上乗せした12%の税額控除が受けられ、2%未満の場合は同税額控除自体が適用できなくなる。

一方で、中小企業者の場合は、これまでどおり平均給与等支給額が前事業年度より上回っていれば10%の税額控除を適用することができ、さらに、前事業年度比で2%以上増加した場合には、12%を上乗せした22%の税額控除を受けることができる。つまり、企業規模で控除率に差を設け、大企業は増加給与額の12%を、中小企業者は増加給与額の22%を、それぞれ法人税額から税額控除できるようになった。

所得拡大促進税制の要件は、 (1)給与等支給額の総額が2012年度から一定割合以上増加、かつ(2)給与等支給額の総額が前事業年度以上、(3)一人当たりの平均給与等支給額が前事業年度を上回る、との3要件を満たした場合、給与等支給総額の10%を法人税額から税額控除(法人税額の10%(中小企業は20%)が上限)できる。大企業の場合は、これらの要件のうち(3)の平均給与等支給額が「前年度比2%以上増加」に変更されたわけだ。

したがって、大企業の場合は、賃上げをしても全事業年度比2%未満の増加であれば適用対象外となる。問題となるのは新設法人だ。これまでは新設法人であっても一定の調整措置を満たせば同税額控除を適用することができたが、改正後は、大企業では平均給与等支給額が前事業年度比で2%以上増加していなければならないため、調整措置を適用しても当期からの税額控除はできなくなる。

また、新設法人である資本金1億円以下の中小事業者の場合、上乗せ措置の適用要件は満たさないものの、一定の調整措置により10%の税額控除のみを適用することになる。ちなみに、調整措置とは、上記の要件に照らせば、(1)では「基準雇用者給与等支給額=雇用者給与等支給額×70%」、(2)では「比較雇用者給与等=0」、(3)では「平均給与等支給額=1/1」、「比較平均給与等支給額=0/1」とみなして、適用要件を満たすもの。

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