2017-05-30
2017年度の税制改正では、所得税・個人住民税における現行の配偶者控除・配偶者特別控除を見直し、配偶者控除を満額受けられる配偶者の年収上限を現行の103万円から150万円に引き上げた。この見直しにより、いわゆる「103万円の壁」を解消し、就業調整を意識しなくて済む仕組みの構築が期待されるが、そのためには、税制だけでなく、社会保障制度や企業の配偶者手当などの面で総合的な取組みを進める必要があるとみられている。
今回の改正で「103万円の壁」がなくなるとしても、「103万円」という水準が企業の配偶者手当制度等の支給基準に援用されているとの指摘がある。与党の税制改正大綱では、企業に対し「今回の見直しを踏まえ、労使の真摯な話し合いの下、就業調整問題を解消する観点からの見直し」を要望。そこで、厚生労働省でも、「配偶者手当」のあり方について、企業の実情も踏まえて検討することを強く要請している。
厚労省の調査(2015年職種別民間給与実態調査)によると、家族手当制度がある民間事業所は76.5%、うち、配偶者に家族手当を支給する事業所は90.3%(全体の69.0%)に達する。そうしたなか、有配偶女性パートタイム労働者の21.0%は、税制、社会保障制度、配偶者の勤務先で支給される「配偶者手当」などを意識し、その年収を一定額以下に抑えるために就労時間を調整する「就業調整」を行っている。
こうしたことから、パートタイム労働で働く配偶者の就業調整につながる配偶者手当(配偶者の収入要件がある配偶者手当)については、配偶者の働き方に中立的な制度となるよう見直しを進めることが求められるわけだ。厚労省では、労使において、個々の企業の実情(共働き、単身者の増加や生涯未婚率の上昇等、企業内の従業員構成の変化や企業を取り巻く環境の変化など)も踏まえて、真摯な話し合いが進められることを期待している。
厚労省は、「配偶者手当」を含めた賃金制度の円滑な見直しに当たっては、労働契約法、判例などに加え、企業事例などを踏まえ、その円滑な見直しに向けて留意する必要がある点として、(1)ニーズの把握など従業員の納得性を高める取組み、(2)労使の丁寧な話合い・合意、(3)賃金原資総額の維持、(4)必要な経過措置、(5)決定後の新制度についての丁寧な説明、の5点を挙げている。
この件については↓
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000163186.pdf