国税不服審、2023年1月~3月分の裁決事例を公表

国税不服審判所はこのほど、2023年1月から3月分の裁決事例を同審判所ホームページ上にある「公表裁決事例要旨」及び「公表裁決事例」に追加し公表した。今回公表された裁決事例は、9事例(国税通則法関係3件、所得税法関係3件、法人税法関係1件、相続税法関係1件、たばこ税法関係1件)だった。今回は、3事例において、賦課決定処分を全部取消し又は一部を取り消しており、実務家にとっても参考となると思われる。

ここでは、会社員である審査請求人が、副業で行っていたインターネット販売に係る収益について、所得税等及び消費税等の期限後申告をしたところ、原処分庁が、インターネット販売において実在しない会社名や親族の名を使用するなどの隠蔽又は仮装の行為があったとして、重加算税等の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、隠蔽又は仮装の事実はないとして、原処分の一部の取消しを求めた事案を紹介する。

原処分庁は、請求人が、インターネット販売(本件ネット販売)におけるネットショップにおいて、出品者プロフィール画面の正式名称欄に「H社」と実在しない会社名や親族の名前を記載するなどして、取引名義を仮装することにより、本件ネット販売を行っていた事実を隠蔽した行為は、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する旨主張した。

しかし裁決は、請求人は、出品者プロフィール画面に請求人の携帯電話番号を表示するなど顧客に対して、請求人自身が本件ネット販売を行っていることを示す行動をしており、商品の仕入れや売上代金の回収において、一貫して、請求人の実名で取引を行い、請求人名義の口座を用いていたことからすると、商品の出品の段階において、直ちに請求人が本件ネット販売を行っていることを隠したなどと評価することはできないと指摘した。

したがって、請求人は、商品の仕入れから売上代金の回収までの本件ネット販売における取引の各段階で、取引上の名義に関し、あたかも請求人以外の者が取引を行っていたかのごとく装い、故意に事実をわい曲するなどの仮装行為を行っていた又は請求人に帰属する本件ネット販売の売上を秘匿する等の隠蔽行為を行っていたとは認めることはできないとして、「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められないと判断している。

2023年1月から3月分の裁決事例は↓
https://www.kfs.go.jp/service/JP/idx/130.html