2023-12-29
2世帯住宅等を建設する際などで、不動産(土地・建物)を共有名義で登記するケースがあるが、土地と建物で共有割合が異なるケースもある。共有名義の不動産を相続する場合、相続税の計算は複雑になる。例えば、不動産賃貸業をしていて、賃貸しているアパートを母親と子どもで共有していて、そのアパートの敷地の所有が母親と子どもで1/2ずつ、建物の所有が母親1/4、子ども3/4のケース。
仮に母親が亡くなって相続税の申告をする場合に、その土地の貸家建付地として評価額や小規模宅地等の特例の適用はどうなるのか。前提条件を整理すると、その土地の母親の所有割合が1/2で、そこに建っている建物の3/4を子どもが所有しているということは、母親が所有する土地の半分に子どもが所有する建物の一部が建っていることになる。つまり、母親は所有している土地の半分を子どもに貸していることになる。
それで、母親が土地の賃貸料を子どもからもらっていない場合には、母親所有の土地の半分は使用貸借によって貸していることになるので、貸家建付地として評価額を下げることができるのは、母親が所有する建物の1/4に対応する部分のみとなる。賃貸料を払わずに借りている場合、基本的に借り手側には何の権利もないので貸し手側には制限がかからない。したがって、評価額を下げる理由もないということになってしまう。
また、小規模宅地等の特例については、母親と子どもが生計を一にしているのであれば、基本的には特例の対象となる。特定事業用宅地等に該当するのか貸付事業用宅地等に該当するのかは別にして、亡くなった者と生計を一にしていた親族の事業の用に供されていた宅地等で、生計を一にする親族が相続税の申告期限まで有していて、相続開始前から相続税の申告期限まで、その宅地等に係る貸付事業を行っている場合は特例の対象となる。
ただし、小規模宅地等の特例には適用できる面積に限度があるから、他の自宅等の面積で限度面積まで到達してしまったらこの土地には適用できないということもあり得るので注意が必要となる。整理すると、上記のケースでは、母親が所有している土地の半分は貸していることによる評価減は適用できず、小規模宅地等の評価減は現時点では適用できるが、相続の時の状況や他の土地への適用状況によるということになる。