2024-02-21
雇用の7割を抱える中小企業の成長を促し、労働生産性の高い中堅企業を育てていくことは重要との認識の下、2024年度税制改正においては、中小企業事業再編投資損失準備金制度を拡充し、適用期限を3年延長する。同制度は、一定の要件に基づく経営力向上計画の認定を受けM&Aを実施した際、実施後に発生し得るリスクに備えるため、株式取得価額の70%以下の金額を準備金として積み立てた際、積立額を損金算入できる制度。
同制度拡充の背景には、買手側がM&Aを実施する前に売手側の財務、法務や事業のリスクを調査するデューデリジェンスに大きなコストをかけられない中小企業のM&Aには、簿外債務や偶発債務といった特有のリスクがある実態がある。今回の拡充は、成長意欲のある中堅・中小企業が複数回のM&Aを実施する場合には、積立率を現行の70%から最大 100%に拡充し、据置期間を現行の5年から10年に延長する。
この拡充は、産業競争力強化法の改正を前提に、青色申告書を提出する法人で同法の改正法の施行の日から2027年3月31日までの間に産業競争力強化法の特別事業再編計画(仮称)の認定を受けた認定特別事業再編事業者(仮称)であるものが、その認定に係る特別事業再編計画に従って他の法人の株式等の取得(購入による取得に限る)をし、かつ、これをその取得の日を含む事業年度終了の日まで引き続き有している場合に適用される。
上記の場合において、その株式等の価格の低落による損失に備えるため、その株式等の取得価額に、その認定に係る特別事業再編計画に従って最初に取得をした株式等は90%、それ以外の株式等は100%と、株式等の区分に応じた割合を乗じた金額以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときは、その積み立てた金額は、その事業年度において損金算入できることとなる。
この準備金は、その株式等の全部又は一部を有しなくなった場合、その株式等の帳簿価額を減額した場合等において取り崩すほか、その積み立てた事業年度終了の日の翌日から10年を経過した日を含む事業年度から5年間でその経過した準備金残高の均等額を取り崩して、益金算入する。その事業承継等を対象とする一定の表明保証保険契約を締結している場合には、本制度を適用しないこととする。
準備金の取崩し事由に株式等の取得をした事業年度後にその事業承継等を対象とする一定の表明保証保険契約を締結した場合を加え、その事由に該当する場合には、その全額を取り崩して、益金算入する。また、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定手続きについて、その事業承継等に係る事業承継等事前調査が終了した後(最終合意前に限る)においてもその経営力向上計画の認定ができることとする運用の改善を行う。