2024-03-29
日本商工会議所が会員企業を対象に2023年7月から8月にかけて実施した「事業承継に関する実態アンケート調査」結果(有効回答数4062社)によると、60歳以上の現代表者において、後継者(候補含む)への株式移転に際して、利用・検討している税制(複数回答)は、「暦年贈与」が約3割(30.2%)と最も多く、2018年に抜本拡充された「法人版事業承継税制特例措置」が14.2%となっている。
一方、「株式の買取・納税資金の確保のため後継者の給与を増やす」が11.8%、「株式の買取・納税資金の確保のため後継者が借入れする」が5.3%と、後継者の給与を増やしたり、後継者による借入の返済原資として株式の配当金を充てるなど、後継者の株式買取・納税資金確保のために、会社にキャッシュアウトが発生しているケースもうかがえる。そのほか、「相続時精算課税制度」が8.7%、「法人版事業承継税制一般措置」が4.2%だった。
事業承継税制特例措置について、利用するメリットがあると言われる自社株式評価額が1億円超の企業のうち、既に後継者を決めている企業では、約4割(35.5%)が本制度を利用(検討中を含む)している。一方、約半数が「税制は知っているが、検討していない」(30.2%)、「税制を知らない」(18.1%)と回答しており、顧問税理士や支援機関等を通じた一層の制度周知や理解促進、活用に向けたアプローチが必要とみられる。
事業承継税制を利用するうえでの制度上の障壁(3つまで回答)については、「提出書類や手続きが煩雑」が21.9%で最多。また、「適用期限(2027年12月末)までに事業承継を完了できない」(20.1%)や、「特例承継計画の提出期限(調査時点では2024年3月末だが、2024年度税制改正で2026年3月末に延長する予定)に間に合わない」(17.5%)といった、自社の事業承継のタイミングとのズレを訴える声も多い。
事業承継税制を利用するうえでの自社の障壁(3つまで回答)は、「現代表者が現役で働けるため、今すぐの事業承継は考えられない」が25.0%で最も多く、回答者の平均年齢は60.5歳だった。また、「後継者候補はいるものの、人材育成が終わっていない」(24.6%)や「候補者はいるが、年齢がまだ若い」(17.2%)などが障壁となり、税制を活用できない企業も存在する。