2024-06-26
国税不服審判所はこのほど、2023年10月から12月分の裁決事例を同審判所ホームページ上にある「公表裁決事例要旨」及び「公表裁決事例」に追加し公表した。今回公表された裁決事例は、9事例(国税通則法関係5件、所得税法関係1件、法人税法関係1件、相続税法関係1件、国税徴収法関係1件)だが、今回は、3事例の賦課決定処分を全部取消しており、実務家にとっても参考となると思われる。
ここでは、請求人が、工事代金の一部が申告漏れとなったことについて、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実について、隠匿あるいは故意に脱漏したとまでは認められないとして、審判所が、各事業年度の法人税に係る重加算税の賦課決定処分及び各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分を全部取り消した国税通則法関係の事例を紹介する。
原処分庁は、請求人が現金で受領した工事代金について、請求人の取締役が請求人に帰属する金員と認識して受領した上で帳簿に記載せず、個人的に費消したと認められ、請求人も修正申告において取締役に対する役員賞与を支出したとして追認していることから、これらの行為は故意であり、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「隠蔽」に該当する旨主張した。
しかし裁決は、請求人が領収証の控えが存在しながら帳簿に記載しなかったことをうかがわせる証拠はないことから、工事代金が帳簿に記載されていなかったのは、請求人が工事代金に係る領収証を故意又は過失により発行しなかったか、その控えを故意又は過失により破棄したものと認められるところ、取締役の申立てからは過失により工事代金に係る領収証を発行しなかった事実は認められるとした。
その上で、故意に領収証を発行しなかったことなどにより、故意に帳簿に記載しなかったことを裏付ける証拠は見当たらず、また、取締役が工事代金を個人的に費消したと取り扱われても仕方ない旨申し立てたことや、請求人が工事代金相当額を修正申告で役員賞与の取扱いをしたことは認められるものの、取締役が自らの所持金と混同するなどにより工事代金を個人的に費消した可能性を否定できないと指摘。
さらに、請求人に帰属する金員と認識した上で個人的に費消したと認める証拠もないことなどから、請求人が課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実について、隠匿あるいは故意に脱漏したとまでは認められないと判断して、原処分庁の賦課決定処分を全部取り消している。
2023年10月から12月分の裁決事例は↓
https://www.kfs.go.jp/service/JP/idx/133.html