2017-08-02
テロ等準備罪処罰法は6月15日に成立し、一部を除き7月11日から施行されている。一般国民や企業への影響が色々憶測されているが、一般の会社が法人税を脱税することを計画し、脱税するための帳簿を作成した場合、その会社が正当な事業を行っている会社ならば、『重大な犯罪等を実行することを目的として集まっていること』との要件を満たさず、テロ等準備罪では処罰されないことが、法務省のホームページで明らかにされている。
テロ等準備罪の処罰の対象となる犯罪行為は277あり、テロとは関係のなさそうなものも処罰の対象となる。税法関係でも、地方税法(軽油等の不正製造、軽油引取税に係る脱税)、所得税法(偽りにより所得税を免れる行為等、所得税の不納付)、法人税法(偽りにより法人税を免れる行為等)、消費税法(偽りにより消費税を免れる行為等)による罪が、法律の別表で規定されている。
テロ等準備罪が適用される要件は、(1)「組織的な犯罪集団」の関与、(2)重大な犯罪を2人以上で「計画」、(3)計画した犯罪の「実行準備行為」、の3つで、これらの要件のうち、1つでも欠けていればテロ等準備罪は成立しない。これら3つの厳格な要件全てについて具体的な嫌疑(疑い)が生じなければ捜査を開始することはできないのだが、組織的犯罪集団と関わりのない一般の国民や企業にそのような嫌疑が生じるとは考えづらい。
さらに、「組織的な犯罪集団の関与」では、多数人の継続的な集団、犯罪実行部隊のような組織を有し、重大な犯罪等の実行を目的に集合の全て、「重大な犯罪を2人以上で計画」では、団体の活動として一定の犯罪を実行、具体的かつ現実的合意をすることの全て、また、「計画した犯罪の実行準備行為」では、計画とは別の行為、計画に基づく行為、計画を前進させる行為の全ての要件を満たさなければ、テロ等準備罪の捜査の対象とはならない。
テロ等準備罪処罰法は、犯罪の主体を組織的犯罪集団に限定することを明文で規定しており、一般の会社や市民団体などの正当な活動を行っている団体は適用対象とはならないことも明らかだ。また、対象犯罪も限定的に列挙して範囲を明確にしており、上記の所得税法や法人税法、消費税法等における違法行為も、あくまで組織的犯罪集団が関与する犯罪計画や実行準備行為の「資金源」となる場合にのみ処罰対象となるわけだ。