2024-07-30
インボイス制度においては、従業員等に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額については、帳簿のみの保存による仕入税額控除ができる出張旅費等特例がある。この点、出張旅費等に係る社内規程や基準の有無にかかわらず、また、概算払いによるものか、実費精算によるものかにかかわらず、通常必要であると認められる部分は特例の対象となる。
「通常必要であると認められる部分の金額」は、所得税基本通達9-3《非課税とされる旅費の範囲》の例により判定する。それは、使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうというもの。
社内規程や基準の有無、概算払いか実費精算に関わらずとは、例えば、社内規程で、「1回の旅行当たり3000円」とある一方、所得税非課税の範囲は10000円と認められる場合に、8000円支給した場合は8000円が特例対象となる。また、何らの規定もないが、社員が出張にかかった交通費10000円を実費で請求してきたので、支払ったケースでは、10000円が通常必要と認められるのであれば、特例対象となる。
実費精算が用務先に直接支払っているものと同視しうる場合、通常必要と認められる範囲か否かに関わらず、インボイスの保存により仕入税額控除ができる。その場合、3万円未満の公共交通機関など、他の特例の対象になるものであれば、帳簿のみの保存で仕入税額控除可能となる。「通常必要であると認められる部分の金額」を超える部分は使用人等に対する「給与」として、仕入税額控除の対象外となる。
なお、従業員等の出張等に際し、その出張等に必要な支出に充てるために事業者が支給する日当は、仮に従業員等が軽減税率の適用対象となる「飲食料品の購入」に充てたとしても、事業者は「飲食料品の譲渡」の対価として支出するものではないことから、軽減税率の適用対象とならない。一方、事業者が従業員等から受領した領収書等を基に精算する実費精算分については、その支払いの事実に基づき適用税率を判定することとなる。
また、インボイスの保存が不要とされる特例の対象となる仕入れについては、帳簿に「課税仕入れの相手方の住所又は所在地」、「特例の対象となる旨」の記載が必要となる。記載事項は、(1)課税仕入れの相手方の氏名又は名称、(2)取引年月日、(3)取引内容(軽減税率対象の場合、その旨)、(4)対価の額、(5)課税仕入れの相手方の住所又は所在地、(6)特例の対象となる旨、が挙げられている。