複数年をまたぐ取引に係るインボイス交付の取扱い

国税庁はこのほど、インボイス制度の「多く寄せられるご質問」を2問追加したが、その一つに、「複数年をまたぐ取引に係るインボイスの交付」の取扱いがある。質問は、1年を超える期間にわたって毎月保守(システムのメンテナンスなど)を行う役務を提供している企業が、このように課税期間をまたぐような長期間にわたる課税資産の譲渡等について、対価の前受け時にまとめてインボイスを交付してもいいのかというもの。

回答によると、インボイス発行事業者である売手は、国内において課税資産の譲渡等を行った場合、取引の相手方(課税事業者に限る)の求めに応じ、インボイスを交付する義務が課されている。このインボイスの記載事項である「課税資産の譲渡等を行った年月日」については、課税期間の範囲内で一定の期間内に行った課税資産の譲渡等につきまとめてインボイスを作成する場合には、その一定の期間を記載することになる。

ただし、「課税期間の範囲内で」とあるとおり、一定の期間をまとめてインボイスを交付するとしても、取引の期間が売手の課税期間をまたぐ場合には、インボイスは課税期間ごとに区分し交付することが原則となる。他方、課税期間をまたぐ期間に係る取引をまとめて一のインボイスに記載することも妨げられるものではなく、また、課税資産の譲渡等を行う前にインボイスを交付することも可能となっている。

結論として、そうした点と請求書交付実務の簡便性という観点から、例えば、毎月の保守契約のように一定期間継続して同一の課税資産の譲渡等を行うものについては、売手である事業者がインボイスの交付対象となる期間、継続してインボイス発行事業者である限りにおいて、課税期間の範囲を超える期間をまとめてインボイスを交付することとも認められるとの弾力的な対応が示されている。

なお、課税期間とは、原則として、個人事業者であればその年の1月1日から12月31日までの期間、法人であれば事業年度とされ、その期間は最長1年となるが、課税期間の範囲を超える期間をまとめてインボイスを交付した場合において、当期の課税期間に係る消費税額等の記載が明確に区分されていない場合には、売上税額の積上げ計算を行うことはできない点に留意するよう注意を促している。

また、課税期間の範囲を超える期間をまとめてインボイスを交付した後に、交付したインボイスの記載事項に変更が生じることとなった場合には、修正したインボイスを交付する必要があり、また、その期間の中途でインボイス発行事業者でなくなった場合には、既に交付したインボイスについて、インボイス発行事業者でなくなった期間部分を区分して区分記載請求書等として再交付するなどの対応が必要となる。