2024-11-28
被相続人の兄弟姉妹が相続人になる場合において、その兄弟姉妹が相続開始前に死亡している場合に、被相続人の傍系卑属が代襲相続人になれるかが争われた事件において、令和6年11月12日、最高裁は「直系卑属でない者は被相続人の兄弟姉妹を代襲して相続人になることはできない」との判断を示した。
本件は、Ⅹ1とⅩ2(それぞれBの実子)が、被相続人Cの死亡以前に亡くなっていた母Bの代襲相続人として、Cの遺産である不動産の相続登記を申請したところ、その申請が却下されたため、却下処分の取消を求めた事件である。
Bは、Ⅹ1とⅩ2の出生後にD(Bの叔母)と養子縁組した結果、被相続人Cの妹となっていた。その後、Bが死亡し、続いてCが死亡した。Cには子やその他の直系卑属及びB以外の兄弟姉妹はおらず、死亡時点で直系尊属も配偶者もいない状況であった。
本件の争点は、傍系卑属であるⅩ1とⅩ2が代襲相続人になれるか否かであり、民法889条2項において準用する同法887条2項のただし書「ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。」の解釈が問題となった。Ⅹ1とⅩ2は、ただし書の「被相続人の直系卑属」を「被相続人の傍系卑属」又は「被相続人の血族」と読み替えるだけで足りると主張したのに対し、国側は「単に読み替えて準用するだけでは代襲相続人の範囲がひろすぎる、少なくとも、被相続人と被代襲者の共通する親の直系卑属であることが必要」と主張していた。
最高裁は、民法887条2項ただし書について、「被相続人の兄弟姉妹が被相続人の親の養子である場合に、被相続人との間に養子縁組による血族関係を生ずることのない養子縁組前の養子の子(この場合の養子縁組前の養子の子は、被相続人とその兄弟姉妹の共通する親の直系卑属でない者に当たる。)は、養子を代襲して相続人となることができない旨を定めたものと解される」とし、被相続人とその兄弟姉妹の共通する親の直系卑属でない者は、被相続人の兄弟姉妹を代襲して相続人となることができないとの判断を示した。
なお、本件は、裁判官全員一致の意見で判断が下された。
(参考)令和5年(行ヒ)第165号 不動産登記申請却下処分取消請求事件
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/490/093490_hanrei.pdf