2017-08-17
遺産分割等に関する見直しなどの民法改正を進める法制審議会民法(相続関係)部会は、昨年6月に中間試案を示したが、パブリックコメントにおいて反対意見が多数あったことから、その後、7月18日に民法(相続関係)改正の追加試案を取りまとめた。8月1日~9月22日までパブコメにおいて広く意見を募集するとともに、追加試案の内容の理解を深めるための詳細な説明を加えた「補足説明」を作成・公表している。
追加試案では、配偶者保護のため、被相続人の意思表示を要件に、婚姻期間が20年以上である配偶者に贈与等された居住用不動産を遺産分割の対象から除外することを示した。補足説明では、居住用不動産を遺産分割から除外する場合、居宅兼店舗に適用があるかについて、居住用部分には適用され、店舗部分については不動産の構造や形態、被相続人の遺言の趣旨等により判断が異なるとの考えを示している。
そして、国税庁タックスアンサーに掲載されている贈与税の特例の説明では、居住用部分から優先的に贈与を受けたものとして配偶者控除を適用して申告することができ、また、居住用部分がおおむね90%以上の場合は全て居住用不動産として扱うことができるとしていることを紹介。贈与税の特例は、20年以上連れ添った夫婦間で住宅や住宅取得資金の贈与が行われた場合には、2千万円まで非課税とする特例規定だ。
一方、居住用不動産を遺産分割から除外する場合、いつの時点で居住の用に供しているのかも問題となる。贈与時点とした場合、転居を繰り返すことにより、複数の不動産が遺産分割から除外されることになるため、相続時とすべきとの考えもあった。しかし、一般に贈与等をした被相続人が、その後死亡するまでにその贈与等について、何らかの意思表示をするとは考えにくいことからすると、贈与時点で居住用を判定すべきとしている。
なお、追加試案の遺産分割等に関する見直しでは、そのほか、相続された預貯金債権について、生活費や葬儀費用の支払、相続債務の弁済などの資金需要に対応できるよう、遺産分割前にも払戻しが受けられる「仮払い制度」の創設や、相続開始後に共同相続人の一人が遺産の全部又は一部を処分した場合に、計算上生ずる不公平を是正する方策を設けることにより、処分がなかった場合と同じ結果を実現できるようにする財産処分案などがある。