令和5事務年度における相続税の調査等の状況

国税庁は、資料情報等から申告額が過少であると想定される事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告であると想定される事案等について、相続税の実地調査を実施し、その調査結果を公表した。
 
令和5事務年度における実地調査件数は8,556件となり、前事務年度比104.4%と増加した。このうち申告漏れ等の非違があった件数は7,200件(同102.3%)、申告漏れ課税価格は2,745億円(同104.4%)だった。さらに、重加算税賦課の対象となった課税価格は375億円に上った。追徴税額(本税と加算税の合計)は735億円(同109.8%)に達し、調査の成果が上がっていることがうかがえる。
 
国税庁は、実地調査と並行して「簡易な接触」にも積極的に取り組んでいる。簡易な接触とは、電話や来署依頼を通じて納税者に是正を求める手法で、効果的・効率的に課税を行うものとして位置づけられている。
令和5事務年度の接触件数は18,781件と大幅に増加し(同125.2%)、このうち非違があった件数は5,079件(同137.8%)だった。申告漏れ課税価格は954億円(同 139.0%)、追徴税額合計は122億円(同140.8%)と、いずれも平成28事務年度以降で最高で最高値を記録した。
 
相続税調査において国税庁が特に重点を置いているのが、無申告事案と海外資産関連事案である。無申告事案については、税の公平性を著しく損ねる問題として例年重点的に取り組んでおり、令和5事務年度における無申告事案の追徴税額は123億円に達した。この金額は、調査結果の公表が始まった平成21年度以降で最高となる。
一方で、資産運用の国際化に対応するため、国税庁はCRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)や租税条約等に基づく情報交換制度などを活用し、海外取引や海外資産の把握に努めている。しかしながら、令和5事務年度の海外資産関連事案では非違件数が168件(同96.6%)、申告漏れ課税価格が62億円(同88.9%)と、いずれも前年から減少した。
 
国税庁は、今後も実地調査と簡易な接触を組み合わせた効率的な手法を進めるとともに、無申告や海外資産関連事案の早期把握に注力する方針である。これらの調査結果を公表することで、納税者の適正申告意識の向上を図ることを目指している。
 
(参考)令和5事務年度における相続税の調査等の状況

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/sozoku_chosa/index.htm