経済三団体 社会全体における「価格転嫁の商習慣」の定着を要請

日本経済団体連合会、日本商工会議所、経済同友会は1月16日、連名で社会全体における「価格転嫁の商習慣」の定着を会員事業者等に要請した。
 
背景には、2020年に導入された「パートナーシップ構築宣言」(以下「宣言」という。※1)の推進に向けて、これまで二年連続で共同要請を行うなどの取組を行ってきたが、宣言企業数は5割以上増加しているものの、コスト転嫁率は約50%に留まり、価格転嫁が進まないという状況がある。
 
【要請内容の要旨】
1.経営者自らが先頭に立った、取引適正化への取組み強化 
・経営者自らが先頭に立ち、宣言について積極的に宣言・公表を行うとともに、実行とフォローのための社内体制を明確に示し、取引適正化の徹底を図る。
・下請法改正等に伴い、宣言の内容を不断に見直すとともに、直接の取引先を通じて、その先の取引先へ働きかけることで、宣言の実効性確保と社会全体への浸透を図る。
・発注者及び受注者は、内閣官房と公正取引委員会による「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(※2)に示された12の行動指針に沿う行為を徹底するとともに、経営トップが社内外に方針を示す。
 
2.労務費、エネルギーコスト、原材料費の価格転嫁の推進
・発注者及び受注者は、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の価格交渉様式例を活用し、最低賃金上昇率、春季労使交渉の妥結額・上昇率等の公表資料を基に価格交渉を行い、下請法対象取引のみならずサプライチェーン全体で労務費、エネルギーコスト、原材料費の価格転嫁を推進する。
・発注者であるサプライチェーン上位に位置する大企業等は、受注者の要請に真摯に向き合うとともに、受注者においても価格交渉力を高め、臆することなく価格交渉を申し入れるなど、価格転嫁を商習慣としていくことに努める。
 
3.「価格転嫁の商習慣」の定着による社会全体の付加価値の向上
・サプライチェーン全体での付加価値の向上を図るとともに、規模や系列・業種・地域を超えたパートナー企業との連携を促進し、発注者及び受注者双方の付加価値の拡大を目指す。 
・人手不足が深刻化する中、デジタル化や省力化など、中小企業単体では対応が困難な課題解決にサプライチェーン全体で積極的に挑戦する。業種・業界・サプライチェーンの課題を適切に把握するとともに、業界内で依るべき優良な取引慣行について体系的な改善サイクルを確立する。
・「価格転嫁の商習慣」の定着による社会全体の付加価値向上を図るため、政府においては、最終消費者である国民に対し、「良いモノやサービスには値が付く」ことの理解深化に向けて、メディア等を活用した啓発を行う。
 
(※1)「パートナーシップ構築宣言」

 

 
(※2)「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」

 

 
(参考)社会全体における「価格転嫁の商習慣」の定着に向けて