音楽・放送番組等の分野の実演家と芸能事務所との取引等に関する実態調査

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公正取引委員会は、クリエイター個人の創造性が最大限発揮される取引環境を整備するため、音楽・放送番組等の実演家(アーティスト、俳優、タレント等)とその所属する芸能事務所・プロダクション(以下単に「芸能事務所」という。)との契約等について実態調査を実施し、昨年12月26日にその結果を公表した。
 
アニメ・音楽・放送番組・映画・ゲーム・漫画といったコンテンツは、我が国の誇るべき財産であり、我が国のクリエイター個人の創造性が最大限発揮される環境を整備するため、クリエイターへの適切な収益還元を阻害する取引関係等の是正に着手する必要があるとの指摘がある。
 
コンテンツ産業活性化戦略(令和6年6月21日閣議決定)においては、「コンテンツ産業については、個人の創造性に重点が移りつつあることに鑑み、公正取引委員会の協力の下、優越的地位の濫用等を防止し、個人を守ることに力点を置いて、音楽・放送番組の分野の取引慣行等について実態調査を行う」とされている。
 
調査方法は、芸能事務所へのアンケート調査(2,628名(回答率30.8%))、ヒアリング調査(95名(実演家29名、芸能事務所37名、放送事業者・番組制作会社10名、レコード会社8名、事業者団体9名、有識者2名))にて行い、問題と思われる事実に関する情報を収集・把握するため、ホームページ上に情報提供フォームを設置(901名から情報提供)することで実施された。
 
調査の結果、①実演家と芸能事務所の取引、②放送事業者等と芸能事務所・実演家の取引及び③レコード会社と芸能事務所・実演家の取引において、独占禁止法上・競争政策上の観点から問題となり得る行為が確認された。
 
具体的には、
① 実演家と芸能事務所の取引では、専属義務の期間(過度な期間にわたる専属義務、期間延長請求権)、競業避止義務等、移籍・独立に係る妨害行為(金銭的給付の要求、移籍・独立を希望する実演家に対する妨害、共同又は事業者団体による移籍制限)、実演家の権利に対する行為(成果物に係る各種権利等の利用許諾、芸名・グループ名の使用制限)、実演家の待遇に関する行為(報酬に関する一方的決定、業務等の強制)、契約の透明性を妨げる行為(契約を書面により行わないこと・契約内容を十分に説明しないこと、取引内容を明示しないこと、明細等を明示しないこと)
② 放送事業者等と芸能事務所・実演家の取引で、取引条件(契約を書面により行わないこと・契約内容を十分に説明しないこと、交渉に応じないこと)
③ レコード会社と芸能事務所・実演家の取引では、契約終了後の活動制限(実演禁止条項、再録禁止条項)
 
が独占禁止法上・競争政策上の観点から問題となり得る行為とされており、公正取引委員会では、独占禁止法上問題となる行為の未然防止の観点から、関係事業者に対して、本報告書の内容を周知し、芸能事務所の主要な事業者団体に対して会員等への本報告書の内容の周知を要請、特に「共同または事業者団体による移籍制限」について注意喚起を行い、今後、報告書の内容を基に、独占禁止法及び競争政策上の具体的な考え方を示す指針を策定、公表することを予定している。
 
(参考)(令和6年12月26日)音楽・放送番組等の分野の実演家と芸能事務所との取引等に関する実態調査 (クリエイター支援のための取引適正化に向けた実態調査)について

https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/dec/241226_geinou.html