2025-02-25
会計検査院は1月29日、新型コロナウイルス禍の影響を受けた観光業支援事業だった「県民割」と「全国旅行支援」の実施状況を調べた結果、観光庁が都道府県に対する予算配分の算定根拠とした資料を残しておらず、交付規模が妥当だったかどうか事後検証できなかったと明らかにした。
この支援事業は、観光庁から補助金の交付を受けた都道府県が、補助事業として、当該都道府県への旅行に係る旅行商品代金又は宿泊代金の割引及び地域限定クーポン券等(クーポン)の付与を行うものであり、GoToトラベル事業に代わる旅行振興策として実施されたものである。
検査の結果は、
1.県民割支援及び全国旅行支援は、1兆1,193億円を財源として計9,907億円(県民割支援3,016億円、全国旅行支援6,890億円)が支出され、差額の1,285億円が不用額であった。
2.観光庁は、予算の配分額として都道府県に通知した交付限度額の算定方法や算定要素に係る資料を保存していないとしており、交付限度額の妥当性を事後的に検証できなかった。
3.44都道府県のうち40都道府県で、団体旅行枠に対する執行額が同枠を下回り、計724億円の残額が発生していた。
(ここで、団体旅行枠とは、全国旅行支援において設定された、貸切バスを利用する団体旅行の費用に限って利用可能な予算の枠のことをいう)
4.観光庁が全国旅行支援の実施途中に電子クーポンによることを原則化したことに伴い、既存の紙クーポンが旅行者に配布されずに余剰となった。
5.一部の県で、旅行者の居住地やワクチン接種等を確認できる根拠資料、使用済紙クーポン等の根拠資料や電子クーポンの電子記録を保存しておらず、根拠資料に基づいて事後的に事業の適正性を十分に検証することができない状況等となっていた。
会計検査院は観光庁に対して
・予算執行に関連する重要な資料を適切に保存し、交付限度額の妥当性について的確な資料に基づき十分に説明できるようにすること
・特定の使途に限定するような予算枠を設定して補助事業を実施させる際には、補助の対象となる旅行の過去の実績等による合理的な基準により予算枠を定めるとともに、事業の実施主体に対して事務連絡等を発出する際には、その取扱いを周知徹底すること
・事業の実施方針を途中で変更する際には、補助事業者における事業の現状を把握するとともに、補助事業者が実情に応じて方針変更の適用時期を遅らせるなどの弾力的な運用ができるよう十分検討を行うこと
・保存すべき根拠資料の種類について、あらかじめ補助事業者に事務連絡等で明示して周知することなどにより、事後的に事業の適正性を十分に検証することができるようにすること
を求めた。
(参考)国会からの検査要請事項に関する報告