2025-04-17
令和7年3月24日、国税庁は保有する行政記録情報を匿名加工したデータを活用し、我が国の税・財政政策の改善・充実に関する統計的研究を行う研究者の募集を国税庁ホームページ上で公表した。この匿名データは、個人の税務申告データを基にしており、令和7年4月から利用申出の受付が始まっている。
この取り組みは、令和6年7月5日にデジタル社会推進会議で決定された「オープンデータ基本指針」を踏まえたものである。国税庁が保有する行政記録情報のオープン化について、有識者からなる会議体で検討を重ね、今回の匿名データ提供に至った。
提供される匿名データは、平成26年分から平成30年分の5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書(第一表・第三表)の情報とされている。申告件数全体から1%(1年分あたり約23万レコード)を抽出し、個人を特定できる情報(氏名、マイナンバー、整理番号、性別情報)を削除した上で、CD-Rによる貸出しにより原則2年間を上限として提供される(※1、※2)。
匿名データの利用者は、公的機関、独立行政法人、大学等に所属する研究者に限定され、研究者の範囲は、博士研究員、大学院生(博士課程後期相当)となっている。利用目的は、学術研究の発展に資するものであり、かつ、税・財政施策の改善・充実に関する統計的研究であることが求められる。研究成果は国税庁の審査後、公表が許可された場合、国税庁ホームページで公表される予定である。
具体的な利用手続の手順は以下のとおりである。
1. 事前準備:ガイドラインや利用規約を参照し、申出準備として仮の申出書を作成する(※3)。
2. 事前相談:提出された仮の申出書について事前の内容審査が行われる。
3. 申出受付:正式な申出書を提出する。
4. 申出審査:申出書について国税庁で内容審査が行われる。
5. 承諾又は不承諾:申出書に対する承諾または不承諾の決定通知が申出者に送付される。
研究者に提供された匿名データは、研究者により厳重に保管され、研究終了後は研究成果とともに国税庁に返却される。研究中の中間成果物についても、復元できないように消去または破棄した上で国税庁に報告することが義務づけられている。
政府がEBPM(証拠に基づく政策立案)を推進する中、これまで国税当局において厳重に管理されていた税務申告データを研究者に提供し、研究を行うことによって、税制の効果検証や将来の税制への政策提言につながる可能性がある。今後の日本経済に有益な税制を生み出すことが期待されている。
(参考)匿名データ
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/tokumei_data/index.htm