2017-10-24
会計検査院は、10月11日付で全国健康保険協会に対し、傷病手当金と障害厚生年金との併給調整が適切に行われていなかったとして、是正の処置・改善を要求した。健康保険法に基づき支給される傷病手当金は、病気やけがの療養のため働けず給料が支給されない場合で、3日以上会社を休んだときに、4日目を初日として、毎月申請することで最大1年6ヵ月間、給料の3分の2が健康保険から支給される。
一方、厚生年金保険法に基づき支給される障害厚生年金は、病気やけがが原因で体に障害が残ったときに支給されるもので、初診日から1年6ヵ月を経過した日に受給権が発生する。被保険者からの請求に基づく厚生労働大臣の裁定(年金の給付を受ける権利があることの確認)により、受給権発生日の翌日から、また、裁定が受給権発生日の翌々月以降に行われたときは、受給権発生日の翌月分から遡及してそれぞれ支給される。
傷病手当金と障害厚生年金等との併給調整は、傷病手当金と同一の疾病等で障害厚生年金の支給を受けることができるときは、傷病手当金を支給しないか又はその支給額を減額する制度。併給調整の対象となるかどうかを確認するため、全国健康保険協会では、日本年金機構に対して、過去1年間に申請書の受付をした者に係る年金情報(障害厚生年金の年額、支給開始日、傷病名等)を照会している。
しかし、会計検査院が2013年度から2015年度の対象者を検査したところ、同一の疾病等により、傷病手当金と障害厚生年金とを同じ期間を対象として支給しているのに併給調整されていない者が31人(要返還傷病手当金1761万円余)いた。これらの31人については、全国健康保険協会は機構から年金情報の提供を受けていないため、これらの31人に係る年金情報を確認しておらず、併給調整の必要があることを把握していなかった。
原因は、過去1年間に申請書の受付を行った対象者に限定して機構から年金情報の提供を受けていることなどによるものと指摘。会計検査院では、31人に支払い済みの傷病手当金計1761万円余の要返還分の処置とともに、申請書の受付から1年を超えた時期に障害厚生年金の裁定が行われている対象者について併給調整を今後適切に行うことができるよう、1年間に限定している年金情報の対象範囲の見直しをする是正改善の処置を求めた。
この件については↓
http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/29/pdf/zenbun_h291011.pdf