2017-10-30
日本税理士会連合会(神津信一会長)は、会長の諮問機関である税制審議会において毎年度、1年間かけて税制上の諸問題を検討し、その結果を報告している。納税者の代理人としてプロの立場から税制の見直しを行っているのだが、このほど、神津会長が同審議会に対し、2017年度は「個人所得課税における控除方式と負担調整のあり方について」を諮問したことを明らかにした。
諮問によると、2017年度の税制改正では、個人所得課税について、就業調整をめぐる課題に対処するため配偶者控除及び配偶者特別控除が見直されたが、所得再分配機能の回復を図る観点から、今後も各種控除等の見直しが行われると考えられる。現行の税制では、基礎控除を始めとする人的控除等が「所得控除方式」によっているため、高所得者ほど税負担の軽減効果が大きいという指摘がある。
このため、所得の金額にかかわらず税負担の軽減額が一定になる「ゼロ税率方式」や「税額控除方式」の導入を検討すべきであるという意見がある。また、税負担の調整に関して、現行の制度では、給与所得控除などを適用して所得計算の段階で負担調整を行っているが、雇用が流動化し、働き方が多様化している現在、所得の種類に応じた負担調整ではなく、家族構成などの納税者の人的な事情に配慮した負担調整にシフトすべきとの意見がある。
このため、与党の「2017年度税制改正大綱」では、「給与所得控除などの『所得の種類に応じた控除』と基礎控除などの『人的控除』のあり方を全体として見直すことを検討していく」としている。なお、人的控除等のあり方を検討するに際しては、個人住民税が比例税率となっているため、どのような控除方式を採用しても負担調整効果が同じになるという点も勘案する必要があると考えられる。
こうしたことから、個人所得課税における控除方式と負担調整の方法について、配偶者控除額に逓減・消失する仕組みを導入した2017年度の税制改正を踏まえて、そのあり方の検討を、税制審議会に対して諮問している。なお、同審議会の答申は、日税連が毎年、関係省庁に提出する税制改正建議書に反映されている。