所得税調査、1割の実地調査で申告漏れの6割を把握

国税庁によると、個人に対する今年6月までの1年間(2016事務年度)の所得税調査は、前年度に比べ0.5%減の64万7千件行われたことが分かった。そのうち、全体の約62%にあたる40万件から同1.1%増の8884億円の申告漏れ所得を見つけた。その追徴税額は同3.5%増の1112億円。1件平均137万円の申告漏れに対し17万円を追徴した。

実地調査における特別調査・一般調査(高額・悪質な不正計算が見込まれるものを対象に行う深度ある調査)は、前年度に比べ2.1%増の4万9千件を実施、うち約88%にあたる4万3千件から同0.5%減の総額4499億円の申告漏れ所得を見つけ、同0.9%増の753億円を追徴。件数では全体の7.6%に過ぎないが、申告漏れ所得金額は全体の50.6%を占めた。調査1件あたりの申告漏れは918万円と、全体の平均137万円を大きく上回る。

また、実地調査に含まれる着眼調査(資料情報や事業実態の解明を通じて行う短期間の調査)は、前年度比16.7%増の2万1千件行われ、うち1万6千件から同19.1%増の860億円の申告漏れを見つけ、66億円を追徴。1件あたり平均申告漏れは405万円。一方、簡易な接触は、同1.2%減の57万7千件行われ、うち34万2千件から同0.5%減の3525億円の申告漏れを見つけ293億円を追徴。1件あたりの平均申告漏れは61万円だった。

実地調査トータルでは、前年度比6.1%増の7万件の調査を行い、うち5万8千件から同2.2%増の5359億円の申告漏れを見つけ、819億円を追徴。つまり、実地調査件数は全体の10.8%と1割に過ぎないが、申告漏れ所得全体の約6割(60.3%)を把握しており、高額・悪質な事案を優先して深度ある調査を的確に実施する一方、短期間で申告漏れ所得等の把握を行う効率的・効果的な所得税調査が実施されていることが裏付けられた。

このように、近年の所得税調査の特徴は、高額・悪質と見込まれるものを優先して深度ある調査(特別調査・一般調査)を重点的・集中的に行い、一方で実地調査までには至らないものは電話や来署依頼による“簡易な接触”で済ます調査方針にある。なお、業種別1件あたりの申告漏れ所得金額が高額な業種は、「風俗業」(2083万円)、「キャバレー」(1667万円)、「プログラマー」(1178万円)までがワースト3。

この件については↓
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2017/shotoku_shohi/index.htm