2016年度譲渡所得調査では1494億円の申告漏れを把握

税務調査は年々、高額・悪質なものを選定して重点的に行われているが、譲渡所得調査も、不動産等の売買情報など、あらゆる機会を利用して収集した各種資料情報を活用して、高額・悪質と見込まれるものを優先して行われる。国税庁のまとめによると、今年6月までの1年間(2016事務年度)の譲渡所得調査は2万6872件に対して行われ、うち75.7%に当たる2万353件から1494億円の申告漏れを把握したことが分かった。

前事務年度に比べ、調査件数は0.2%増、申告漏れ等の非違件数は2.1%増とともに増加したが、申告漏れ所得金額は3.5%減少した。申告漏れ割合については前事務年度から1.4ポイント増加の75.7%だった。調査1件あたりの申告漏れ所得金額は556万円(前事務年度578万円)となるが、この額は、同事務年度の所得税調査で把握された1件あたり平均の申告漏れ所得金額の137万円を大きく上回る。

調査の内訳をみると、株式等譲渡所得については、前事務年度比10.2%増の6435件の調査を実施。このうち84.6%に当たる5443件(前事務年度比17.0%増)から総額381億円(同8.5%減)の申告漏れ所得金額を把握した。また、土地建物等については、同2.6%減の2万437件の調査を実施し、このうち73.0%に当たる1万4910件(同2.5%減)から総額1114億円(同1.7%減)の申告漏れ所得金額を把握している。

事例をみると、譲渡物件に居住していなかったにもかかわらず、「居住用財産を譲渡した場合の特別控除の特例」を不正に適用していた会社員Aの例がある。同特例は、居住用財産の譲渡について、一定の要件を満たす場合、譲渡所得から最高3千万円までを控除できるというもの。Aは、不動産の譲渡所得について、同特例を適用して申告していたが、実際の居住状況を確認する必要があったことから、調査が行われた。

当初、Aは、譲渡物件の所在地で住民登録をしていたことや、自らが電気・水道等の契約をしていたことを根拠に、譲渡物件に居住していたと主張。しかし、その後の調査で、実際には譲渡物件に居住していなかった事実が判明した。Aは、少しでも税金を安くするため、住民票を異動させるなどして居住していたように装っていたもので、Aには、申告漏れ所得金額約3000万円に対し、重加算税を含む約700万円の税額が追徴された。