2017-11-28
国税庁では、相続税の補完税である贈与税の適正な課税を実現するため、積極的に資料情報を収集するとともに、相続税調査時等、あらゆる機会を通じて財産移転の把握に努め、無申告事案を中心に、積極的に贈与税の調査を実施している。国税庁がまとめた2016事務年度の贈与税調査事績によると、3722件(前事務年度比3.0%増)の実地調査が行われ、3434件(同2.5%増)から1918億円(同883.9%増)の申告漏れ課税価格が把握された。
追徴税額は、加算税を含め453億円(前事務年度比823.8%増)にのぼる。申告漏れ課税価格及び加算税の大幅増加は、大口事案があったための特異なもので、この影響から1件当たりでも申告漏れ課税価格は5153万円、追徴税額は1218万円と高額になっている。また、国税当局では、贈与税の無申告事案の積極的な調査に努めており、申告漏れのうち80.3%が無申告事案だったが、その申告漏れ課税価格は全体の7.6%に過ぎない。
つまりは、贈与額が少ないことから国税当局にはばれまいと高をくくって申告しない納税者がいかに多いかが浮き彫りになったといえる。申告漏れ財産をみると、全体の73.1%(2725件)が「現金・預貯金等」で7割を超え、「有価証券」の9.9%(369件)、「土地」の3.5%(129件)、「家屋」の1.1%(41件)を大きく上回っており、移動及び隠しやすい現金や名義預金としている預貯金を申告から除外するケースが多い。
贈与税の申告漏れ事案の端緒は、相続税調査時の被相続人の預貯金等状況の確認等での場合も多い。例えば、相続税調査の際、相続人Aから「被相続人から現金を贈与されたことがあるが、申告をしていなかったので期限後申告をしたい」との申し出があったケースでは、調査官から他に贈与がないかの確認を受けた相続人はないと回答。しかし、被相続人名義の預金口座から不明出金があったことから相続人Aへの贈与税の調査が行われた。
調査の結果、被相続人名義の預金口座からの不明出金については、相続人A名義の預金口座へ入金されている事実が把握され、相続人Aは、この預金も贈与税の申告対象となることを知りながら、税負担を少なくするため贈与の一部のみを調査官に話したことが明らかとなった。相続人Aに対しては、申告漏れ課税価格約3000万円について重加算税を含め約1200万円が追徴課税されている。