2018-01-29
法制審議会の民法(相続関係)部会は、遺産分割における配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)などを柱とする民法改正の要綱案をまとめ公表した。配偶者保護のための方策は、「婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が他の一方に対し、その居住の用に供する建物又は敷地について遺贈又は贈与したときは、民法903条第3項の持戻しの免除の意思表示があったものとして推定する」というもの。
特別受益の持戻しは、共同相続人中に、被相続人から、遺贈や贈与による特別受益を得た者がいる場合、この特別受益財産を相続財産の価額に加えることをいう。しかし、被相続人が持戻しを希望しない意思を表明している場合には、持戻しを行わないことになり、これを特別受益の持戻しの免除という。つまり、持戻しの免除の意思表示があれば、配偶者に贈与した住居は遺産分割から除かれて、相続の対象とはならないことになる。
この結果、配偶者が取得した住居は遺産分割の対象から外れて、現預金や不動産などの財産を相続人で分ける際に、配偶者の取り分は実質的に増えることになり、残された配偶者の生活の保護が図られる。また、夫や妻がなくなったときに、配偶者の居住権を保護するため、遺産分割が確定するか相続開始時から6ヵ月経過する日のいずれか遅い日までの間、その居住建物に無償で住める「配偶者短期居住権」を創設する。
遺産分割に関する見直しでは、さらに、相続された預貯金債権について、生活費や葬儀費用の支払、相続債務の弁済などの資金需要に対応できるよう、遺産分割前にも払戻しが受けられる「仮払い制度」の創設や、相続開始後に共同相続人の一人が遺産の全部又は一部を処分した場合に、計算上生ずる不公平を是正する方策を設けることにより、処分がなかった場合と同じ結果を実現できるようにする財産処分案などがある。
ほかでは、相続人以外の者の貢献を考慮するため、被相続人の親族で相続の対象にならない人でも、被相続人に対して無償で介護や看病などをしたことで被相続人の財産の維持や増加に特別の寄与をした場合は、相続人に対し、その特別に寄与した者の寄与に応じた金銭の支払を請求できることとする。その支払については、当事者間で協議するが、協議が調わないときは、特別寄与者は家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求できる。