小規模宅地等の特例の適用要件の見直しに経過措置

2018年度税制改正法案は2月2日に国会に提出されたが、法案には昨年12月に公表された税制改正大綱には盛り込まれていない事項がいくつかある。その一つは、厳格化される相続税の小規模宅地等の特例の適用に経過措置が設けられたことだ。大綱では、貸付事業用宅地等の見直しに係る経過措置は示されていたが、特定居住用宅地等に係るいわゆる“家なき子”の経過措置の内容は明記されていなかった。

2018年度税制改正では、持ち家に居住していない者(いわゆる家なき子)に係る特定居住用宅地等の要件が見直され、特例の適用を受けようとする被相続人の親族が、(1)相続開始前3年以内にその親族の3親等内の親族又はその親族と特別の関係のある一定の法人が所有する家屋に居住したことがないこと、(2)相続開始時においてその親族が居住している家屋を過去に所有していたことがないこと、との要件を満たすことが追加される。

上記の改正は、2018年4月1日以後の相続又は遺贈により取得する宅地等に係る相続税について適用されるが、改正法案の附則において、一定の経過措置が設けられた。それは、2020年3月31日までに、2018年3月31日において見直し前の(現行の)特定居住用宅地等の要件を満たしていた宅地等を相続等により取得する場合には、その宅地等は見直し後の要件を満たしているものとする、というものだ。

現行の家なき子に係る要件は、相続開始前3年以内に、被相続人の親族(特例の適用を受けようとする親族)又はその親族の配偶者が所有する家屋に居住したことがないこと、被相続人に配偶者がいないこと。つまり、経過措置によって、2018年3月31日時点においてこの現行要件を満たしていた宅地等を2020年3月31日までに相続等により取得する場合には、同特例の適用が認められることになる。

なお、貸付事業用宅地等に係る特例の適用については、その範囲から、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等は除外される。相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている場合は特例の対象となるが、一律3年以内の縛りで50%減額が受けられなくなる。また、2018年3月31日までに貸付事業の用に供された宅地等については、この改正は適用しないこととされている。