2018-11-27
会計検査院は、先日公表した2017年度決算検査報告の中で、旧経営者から事業を引き継いだ新経営者である個人事業者が、消費税の納税義務を免除されている現状に疑義を呈し、財務省に制度を見直すよう検討を求めた。消費税は、小規模事業者の事務処理能力等を勘案して、原則として、個人事業者は課税期間の前々年における課税売上高が1000万年以下の事業者については消費税の納税義務を免除することとされている。
個人事業者が改廃業手続きによって事業を引き継いだ場合も、新経営者は、新規に事業を開始した個人事業者と同様に、事業を開始した年及びその翌年に係る自らの基準期間における課税売上高がないことから、旧経営者が消費税の納税義務者だったとしても、事業者免税点制度により、原則として改廃業手続きによる事業の引継ぎを行って事業を開始した年及びその翌年の消費税の納税義務が免除される。
ところが、会計検査院が、旧経営者及び新経営者に係る事業収入等の状況や事業の継続性について調査したところ、多くの場合、新経営者に係る事業収入等は、消費税の納税義務者だった旧経営者と同程度となっていて、新経営者の推計課税標準額は旧経営者の課税標準額と同様に1000万円を超えている状況と推測。また、新経営者に係る業種は、旧経営者と同一の業種を引き続き継続している状況になっていることも想定された。
実際に新経営者の9割超が旧経営者の事業に従事していたことから、多くの場合、新規に事業を開始した個人事業者においては消費税に係る事務処理能力を含む事務処理の体制を新たに構築する必要があるのに比べて、改廃業手続きによる事業の引継ぎを行って事業を開始する新経営者は、消費税に係る事務処理能力を含む事務処理の体制について、消費税の納税義務者だった旧経営者から引き継いでいる状況であることも想定された。
会計検査院は、「改廃業手続きによる事業の引継ぎを行って事業を開始した新経営者が、事業者免税点制度により免税事業者となっている現状は、小規模事業者の事務処理能力等を勘案して消費税の納税義務を免除する事業者免税点制度の趣旨に沿ったものとはなっていない」と指摘。財務省に対し、「事業者免税点制度等の在り方について、引き続き、様々な観点から有効性及び公平性を高めるよう検討すること」を求めた。
この件については↓
http://www.jbaudit.go.jp/report/new/summary29/pdf/fy29_tokutei_03.pdf