2018-12-07
会計検査院はこのほど、中小企業等の貸倒引当金の特例措置の適用状況を調べた結果、法定繰入率と貸倒損失発生率との間に大幅なかい離があることから、引当金が過大に計上されて法人税の減収につながっていると指摘した。同特例は、中小企業等の貸倒引当金の繰入限度額について、法定繰入率を用いることができるとしたり、中小企業等のうち公益法人等及び協同組合等について、繰入限度額を更に割増ししたりする措置。
検査院が、内国普通法人における事業区分ごとの貸倒損失発生率を算出したところ、全事業区分において、引当金の繰入限度額の計算方法として認められる「法定繰入率」が実際の貸倒損失発生率を上回っていた。また、2011年度~15年度に特例を適用した法人は延べ約178万法人、損金算入額は1兆2902億円にのぼり、全業種で法定繰入率が貸倒損失発生率を上回り、金融保険業では30倍近く高かったことが判明した。
そして、農林水産省の資料を基に繰入率特例による法人税の減収額を推計したところ、537法人で計133億余円となった。また、消費税等の課税事業者で所得がある1494法人について、消費税等の課税事業者において損失とはならない仮受消費税相当額に係る貸倒引当金繰入額のうち損金の額に算入された額を試算し、これを基に推計した法人税の減収額は計2億余円だった。
このように、法定繰入率と貸倒損失発生率との間に大幅なかい離があること、期末一括評価債権額に損失とならない仮受消費税相当額が含まれていることなどから、繰入率特例における繰入限度額は合理的に測定されるなどしたものとなっているとはいえないおそれがあると指摘。これらを踏まえ、関係省庁に対し、貸倒引当金の特例の検証を行い、国民に対する説明責任を的確に果たしていくことを求めた。
なお、法定繰入率により繰入限度額を算出する措置は、1950年度税制改正により事務の簡素化等を目的として創設されて以降、法人税法等で規定。法定繰入率は、概算で繰入率を定めているという趣旨に鑑み、常に貸倒実績率をしん酌しつつ、合理的に測定された適正なものとすることが必要として、随時、貸倒れの実績率とのかい離がある場合には引下げ等が行われてきたが、1985年度以降、法定繰入率の見直しは行われていない。
この件については↓
http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/30/pdf/301130_gaiyou_01.pdf