イノベーション促進のための研究開発税制の見直し

2019年度税制改正における法人税関係には、イノベーション促進のための研究開発税制の見直しがある。研究開発投資の「量」をさらに増加させていくため、控除上限を最大で法人税額の45%に引き上げるなど、研究開発投資の増加インセンティブをより強く働くよう見直しを行うとともに、研究開発投資の「質」の向上に向け、オープンイノベーションや研究開発型ベンチャーの成長を促す措置を講じる。

大学・国の研究機関、企業等との共同・委託研究等の費用(特別試験研究費)総額に係る控除制度(オープンイノベーション型)は、質の高い研究開発を一層促進する観点から、対象となる試験研究の範囲を拡充するとともに、控除上限を10%(現行5%)に引き上げる。大企業に対する委託研究(控除率20%)を対象に追加し、研究開発型ベンチャーとの共同研究・委託研究の税額控除率を25%(現行20%)とする。

新たに対象に追加される大学への委託研究は、(1)委託に基づき行う業務が、受託者において試験研究費に該当すること、(2)委任契約等において、成果を委託法人が取得することとしていること、(3)委託する試験研究が基礎研究又は応用研究に該当するか、受託者の知的財産等を利用するものであること、(4)委任契約等において、試験研究の類型等一定の事項が定められていること、との要件がある。

総額型(試験研究費の総額に係る税額控除制度)については、十分な収益が発生していない中でも果敢な研究開発投資を行う一定のベンチャー企業について、税額控除のメリットを十分に享受できるよう、控除上限を40%(現行25%)に引き上げる。対象となるベンチャー企業は、設立後10年以内の企業のうち、当期において翌期繰越欠損金を有することとなる法人で、大法人の子会社等は除かれる。

また、現行の高水準型について、売上に比して高い水準の研究開発を行っている企業に対する増加インセンティブにも配慮しつつ、制度の簡素化の観点も踏まえ、「試験研究費割合が10%超の場合の総額型の控除上限の上乗せ特例」と統合し、控除率を一定程度割増し(最大1.1倍)する措置を加えた新たな制度に改組する。総額型の控除率10%~14%部分(2018年度末までの時限措置)は2年延長する。

この結果、法人税額の何%まで控除できるかという控除上限は、高水準型を廃止し、試験研究割合10%超の場合の控除上限上乗せが「10%」、A-1総額型及び中小企業技術基盤強化税制が「25%」(ベンチャー企業の場合は40%に引上げ)、オープンイノベーション型の控除上限が5%引き上げられて「10%」となり、改正後は控除上限が最大で法人税額の45%(現行40%)に引き上げられることになる。