金の密輸入増加に対応して仕入税額控除制度を見直し

財務省が22日に公表した2018年の全国の税関における金地金密輸入事犯の摘発状況によると、同年に全国の税関が摘発した金地金(金塊に加えて一部加工された金製品も含む)密輸入事犯の件数は1088件(前年比▲約20%減)、押収量は2119キログラム(同▲約65%減)だった。摘発件数、押収量ともに減少したが、近年金の密輸入の増加は著しいものがあり、2019年度税制改正においてもその対応策が盛り込まれている。

摘発した事犯を密輸形態別件数でみると、前年は航空機旅客等による密輸入が全体の9割以上であったのに対して、2018年は、航空機旅客等(653件、1876キログラム)が約6割にとどまる一方、航空貨物(390件、219キログラム)が3.5割を占め、密輸形態が多様化している。密輸仕出地別にみると、「香港」(332件)、「韓国」(319件)、「中国」(224件)の順に摘発件数が多く、上位3ヵ国・地域で全体の約8割を占めた。

特に、中国からの密輸入は前年比7倍と急増している状況にある。摘発事例は全国にまたがっており、大規模空港のみならず地方の海港・空港(清水港、宮崎空港等)でも摘発。金密輸入に対しては、全国の税関で取締りを強化し、厳正に対処している。2018年は摘発件数、押収量ともに減少したとはいえ、前年の2017年は摘発件数(1347件)、押収量(6277キログラム)はともに過去最高だったことから、金の密輸入はいまだ高水準にある。

摘発件数、押収量ともに消費税率が8%に引き上げられた2014年から急増。輸入時には税関で消費税が課税されるが、密輸して消費税を免れ国内で売れば消費税分が儲けとなるため、消費税率が高くなればなるほど密輸による儲けも大きくなることが増加の背景にある。2018年度税制改正では消費税法を改正し、輸入に係る消費税の脱税に係る罰金額の上限を、脱税額の10倍が1000万円を超える場合には、脱税額の10倍に引き上げた。

本年10月には消費税率10%への引上げが予定されており、金の密輸のさらなる増加が想定されることから、2019年度税制改正では、消費税における仕入税額控除制度について、(1)密輸品と知りながら行った課税仕入れについて、仕入税額控除制度の適用を認めない(2019年4月以後適用)、(2)金又は白金の地金の課税仕入れについて、本人確認書類の写しの保存を仕入税額控除の要件に加える(同年10月以後適用)、との見直しを行う。

金地金密輸入事犯の摘発状況は↓
https://www.mof.go.jp/customs_tariff/trade/safe_society/gold/cy2018/index.htm