本来外注先が負担すべき源泉税を会社が負担した場合

源泉徴収義務者は、役員や従業員への給与だけでなく、外注先への報酬等について一定のものには、源泉徴収して国に納付する必要がある。ところが、報酬等の源泉徴収義務についてはその判断に悩むものもあったり、また、うっかり忘れてしまったりして徴収しなかったところを税務調査で指摘されることも少なくない。こうしたケースでは、税務署が源泉徴収義務者(支払者である会社等)から強制徴収することになっている。

この場合、強制徴収された源泉所得税相当額は、経常的に仕事を発注している外注先であれば、請求して次回の報酬の支払額から立替払いをした源泉徴収税額を控除することもできる。しかし、単発で依頼をした外注先に対しては、いまさら請求はできないなどというケースもある。そこで、外注先から徴収せずに、本来外注先が負担すべき源泉徴収税額を会社が負担することも多いと思われる。

このように、強制徴収された源泉所得税相当額を会社等が負担した場合には、実質的に負担した源泉所得税相当額の報酬が支払われたことになるので、これに対する税額を再計算する必要がある。源泉所得税を納付した会社等は、その強制徴収された源泉徴収税額を外注先から徴収しないこととしたときに、その納付税額相当額の報酬等を支給したものとして、その税額を計算することとされている。

この計算については、給与等その他の源泉徴収の対象となるものの支払額が税引手取額で定められている場合の計算と同じように、税引手取額を税込みの金額に逆算して、その逆算した金額を源泉徴収の対象となる支払額として源泉徴収税額を計算することになる。したがって、支払者である会社等は、報酬・料金等の追加支給をしたものとして、その支払額について計算される源泉所得税を追加納付しなければならないとされている。

なお、消費税については、報酬として源泉徴収漏れとなった分を会社が負担すればその金額も報酬として消費税の課税対象とされるが、報酬として処理していたものが実質的に給与とされたことによる源泉徴収漏れを指摘されその分を会社が負担した場合には、その者に対する追加給与とされるので、消費税の課税対象とはならず消費税の控除はできないことになる。