2019-04-08
相続税の特定事業用の小規模宅地等の特例の適用要件が、2年続けて税制改正で厳しく見直されている。小規模宅地等の特例は、事業用・居住用宅地等の相続税の課税価格を8割又は5割減額して相続人の事業や居住の継続等への配慮を目的に創設された制度だが、昨年の2018年度税制改正では、一定の要件に該当する「家なき子特例」とともに、相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等が制度の適用から除外された。
さらに、2019年度税制改正では、特定事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等が除外され、2019年4月1日以後に相続・遺贈により取得する宅地等の相続税から適用されることになる厳しい見直しが2年続いた。これによって、貸付事業用の小規模宅地等特例の例にならい、節税を目的とした駆込み的な小規模宅地特例の適用の防止が期待される。
ただし、これにその宅地に該当する場合であっても、その宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、その宅地等の相続時の価額の15%以上である場合の事業を行っていた被相続人等の事業の用に供されたものである場合には、特例の適用対象とされた。3月29日に公布された政令では、その宅地等の相続時の価額の15%以上である場合には特例が適用される事業用資産が明示されている。
それは、(1)建物(附属設備を含む)又は構築物、(2)所得税法2条1項19号に規定する減価償却資産(機械及び装置、車両及び運搬具、工具、器具及び備品等)である。一連の改正の背景には、小規模宅地等の特例を適用した者の中には相続後短期間で宅地等を譲渡していた者が多数いたことが実態調査により明らかになったことを踏まえ、事業や居住の継続への配慮という政策目的に沿ったものとなっていないとの会計検査院の指摘がある。
会計検査院は2017年11月、相続により取得した土地等の財産を相続税の申告期限の翌日以降3年を経過するまでに譲渡していた2907人の適用状況を調査。その結果、243人が小規模宅地等の特例を適用しており、そのうち相続人が相続税の申告期限から1年以内に譲渡していたものが約6割の163件、1ヵ月以内に譲渡していたものも22件あった。これらは、事業・居住の継続への配慮という政策目的に沿っていないと指摘していた。