評価困難な無形資産取引に係る移転価格ルールの改正

2019年度税制改正において、国際課税関係では、移転価格税制について、OECD移転価格ガイドラインの改訂内容等を踏まえ、独立企業間価格の算定方法として有用性が認められているディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)を加えるとともに、評価困難な無形資産取引に係る価格調整措置が導入される。この改正は、2020年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税及び2021年分以後の所得税について適用される。

移転価格税制とは、海外の関連企業との間の取引を通じた所得の海外移転防止のため、海外の関連企業との取引が、通常の取引価格(独立企業間価格)で行われたものとみなして所得を計算し、課税する制度。BEPS行動8最終報告書では、価値評価が難しい無形資産を、評価の難しさを利用して実際の価値よりも安い価格で軽課税国等の子会社等に譲渡し、その無形資産による利益を子会社にため込む、という租税回避が発生する可能性を指摘。

この対応として、評価困難な無形資産取引に係る価格調整措置を導入。予測キャッシュ・フロー等の額を基礎として独立企業間価格を算定するものであること等の要件を満たす評価困難な無形資産取引について、予測と実際の結果が相違した場合には、税務当局が実際の結果(及び相違の原因となった事由の発生可能性)を勘案して当初の価格を再評価できるようにする(ただし、再評価後の価格が当初の価格の20%を超えて相違した場合のみ)。

ただし、適用免除要件として、予測と結果が相違する原因となった事由が、取引時点で予測困難であったこと(災害等)、又は、取引時点においてその事由の発生可能性を適切に勘案して当初の価格を算定していたことを納税者が証明した場合等においては、上記の再評価は行われないこととする。このように移転価格ルールを見直す一方で、移転税制に係る法人税の更生期間及び更正の請求期間等が7年(現行6年)に延長されている。