2019-07-10
日本税理士会連合会はこのほど、「2020年度税制改正に関する建議書」を公表した。同建議書は、32項目に及ぶ改正建議とともに、今回の重要建議項目として、(1)消費税における単一税率及び請求書等保存方式を維持すること、(2)基礎的な人的控除のあり方を見直すとともに、所得計算上の控除から基礎的な人的控除へのシフトを進めること、(3)「災害損失控除」を創設すること等の3点を盛り込んだ。
(1)については、軽減税率制度は、区分経理等により事業者の事務負担が増加することや、逆進性対策として非効率、財政が毀損し社会保障給付の抑制が必要となるなどの理由から、日税連では、単一税率制度の維持を強く主張している。また、2023年10月に導入予定の適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)への移行は、行政手続コスト削減の方向性に逆行することのないような配慮・見直しを求めている。
(2)については、基礎控除、配偶者控除等の基礎的な人的控除の課税最低限は、健康で文化的な最低限度の生活を維持するために侵害してはならない課税最低限を構成するものだから、生活保護の水準に合わせていくことが望ましい。最低限度の生活を維持するのに必要な部分は担税力を持たないとする最低生活費非課税の観点から、基礎的な人的控除についてはその額を引き上げ、所得控除方式を維持すべきとした。
また、給与所得控除及び公的年金等控除の水準が過大であることや、こうした所得計算上の控除が適用されない事業所得者等とのバランスも踏まえ、所得計算上の控除を縮減した上で、基礎的な人的控除を引き上げるべき。その際、特に、2018年度税制改正において所得計算上の控除から基礎控除へのシフトが行われたこと等を踏まえ、全ての者に適用されるべき基礎控除に負担調整の比重を移すことが望ましいと提案した。
(3)については、「災害損失控除」の創設とともに、相続時精算課税制度における受贈財産が災害等により損失を受けた場合の救済措置を設けることを要望。同制度により受贈した財産について、災害等による滅失や財産価値の著しい低下などにより、担税力に応じた適正な価額により相続税が課税されない場合があるため、相続税の課税価格に加算する価額を、贈与時における価額か相続時の価額のいずれかを選択できるようにすべきとした。