2019-07-31
個人が、事業の用に供している特定の地域内にある土地建物等(譲渡資産)を譲渡して、一定期間内に特定の地域内にある土地建物等の特定の資産(買替資産)を取得し、その取得の日から1年以内に買換資産を事業の用に供したときは、一定の要件のもと、譲渡益の一部に対する課税を将来に繰り延べることができる(譲渡益が非課税となるわけではない)。これを、事業用資産の買換えの特例という。
この特例を受けると、売った金額(譲渡価額)より買い換えた金額(取得価額)のほうが多いときは、売った金額に20%を掛けた額を収入金額として譲渡所得の計算を行い、売った金額より買い換えた金額のほうが少ないときは、その差額と買い換えた金額に課税割合を掛けた額との合計額を収入金額として譲渡所得の計算を行う。事業用資産の買換えの特例を受けるためには、以下の要件全てに当てはまることが必要となる。
まず、(1)譲渡資産と買換資産はともに事業用に限られることがある。次に、(2)譲渡資産と買換資産とが、一定の組合せに当てはまるものであること。以下、(3)買換資産が土地等であるときは、取得する土地等の面積が、原則として譲渡した土地等の面積の5倍以内であること。(4)資産を譲渡した年か、その前年中、あるいは譲渡した年の翌年中に買換資産を取得すること。
(5)買換資産を取得した日から1年以内に事業に使うこと。(6)この特例を受けようとする資産については、重ねて他の特例(優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例等)を適用できないこと。(7)土地等の譲渡については、原則として、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超えていること(2020年3月31日までにした土地等の譲渡については、この要件が停止されている)。
さらに、(8)譲渡資産の譲渡は、収用等、贈与、交換、出資によるもの及び代物弁済としての譲渡ではないこと、また、買換資産の取得は、贈与、交換又は一定の現物分配によるもの、所有権移転外リース取引によるもの及び代物弁済によるものではないこと、がある。以上のように、事業用資産の買換えの特例を受けるためには、上記の要件の全てに当てはまることが求められるので注意が必要だ。
なお、(2)の組合せの代表的なものとして、東京都の23区、大阪市などの既成市街地等内にある事業所として使用されている建物又はその敷地の用に供されている土地等で、その譲渡の日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超えるものを譲渡して、既成市街地等以外の一定の地域(国内に限る)にある事業用の土地等や建物、構築物又は機械装置を取得する場合、などがある。