原処分庁の開発想定図には合理性がないと判断、一部取消し

相続した集合住宅の敷地の用に供されている土地及び被相続人の居宅の敷地の用に供されていた土地が広大地に該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、集合住宅地の敷地の用に供されている土地は既に有効利用されているから広大地には該当しないと判断する一方で、被相続人の居宅の敷地に供されていた土地は、開発行為を想定した場合には公共公益的施設用地の負担が必要と認められるため広大地に当たると判断、原処分の一部を取り消した。

この事件は、共同相続人である審査請求人らが、相続によって取得した土地は財産評価基本通達上の広大地(評基通24-4)に該当することなどを理由に相続税の更正の請求をしたのが発端になったもので、これに対して原処分庁が、土地の一部のみは広大地に該当すると判断した上で更正の請求の一部を認める更正処分をしてきたことから、相続人らが更に同処分の一部取消しを求めて審査請求したという事案である。

つまり請求人らは、相続によって取得した集合住宅の敷地の用に供されている土地及び被相続人の居宅の敷地の用に供されていた土地が所在する周辺地域における標準的使用は戸建住宅の敷地であるから、財産評価基本通達24-4が定める広大地に該当すると主張して、原処分の一部取消しを求めたわけだ。

これに対して裁決は、集合住宅は入居率100%を実現していたと認められる上、今後、相当の期間利用することができるものと認められることからすれば、近い将来に新たな開発行為を行う必要があるなどの特段の事情は認められないことから、集合住宅の敷地として現に有効に利用されているといえるため広大地には該当しないと判断した。

しかし他方の土地は、原処分庁が主張する開発想定図によれば、私道に隣接する各土地に道路を拡幅したとしても、(1)集合住宅の入居者の駐車場の移設が必要となる、(2)道路用地に土地を取得した相続人以外の相続人の所有権が及ぶ、(3)借家人の立退きが必要となる――ことなどが考えられることから、原処分庁の開発想定図に合理性があるとは認められないと指摘して、原処分庁側の主張を斥けた。

一方、請求人らが主張する開発想定図は、土地の所有者以外の者の所有権や賃借権を侵害するような事情はないことなどを考慮すれば合理性があるものと認められ、土地を開発しようとする場合には、公共公益的施設用地の負担が必要であることが認められることから広大地に該当すると判断して、原処分を一部取り消している。 (2018.09.20国税不服審判所裁決)