2020-03-04
特定同族会社事業用宅地等というのは、被相続人が所有する土地で、被相続人や被相続人の家族がオーナーとして経営している会社(同族会社)が事業(貸付事業を除く)を行うために使用している土地のことをいう。会社の事業に使っていた土地のうち400平方メートルまでの部分の評価額が80%減額できるため、相続税が節税できる。ただし、評価額が減額できるのは土地だけで、建物や構築物の評価額は減額できない。
同族会社に貸し出している土地は、多くの場合その賃貸料が相続人の生活を支えており、その土地は自宅の敷地と同様に今後の生活のために必要不可欠なものといえることから、特定居住用宅地等と同じ80%減額の特例が適用できることになっている。これらの土地に高額の相続税が課税されると、納税のために資産を売却することも考えられ、相続人の今後の生活が立ち行かなくなる恐れもあるからだ。
この特例を適用するための主なポイントは、(1) 土地に建物や構築物があること(アスファルト舗装や砂利敷などをしていない青空駐車場や資材置場では特例は適用できない)、(2)相続開始直前において被相続人及び被相続人の親族等がその会社の発行済株式の総数又は出資額の総額の50%超を有していること、(3)相続人が相続税の申告期限においてその会社の役員であること、などだ。
そのほか、土地の保有継続要件(相続税の申告期限まで有していること)もあり、これらの要件を全て満たす必要がある。そこで、被相続人や宅地等を取得した相続人が同族会社の株式を1株も所有していない場合は、特例の適用が受けられないのではないかとの疑問が出てくるが、そのような要件はなく、被相続人の親族の中で合計50%超を保有し、他の要件を満たしていれば減額の対象となるので留意したい。
なお、会社の事業が不動産賃貸業であれば、特定同族会社事業用宅地等の特例は適用できない。ただし、「貸付事業用宅地等の特例」の対象となり、200平方メートルまでの部分の土地の評価額が50%減額できる。不動産賃貸業には、賃貸住宅、賃貸事務所だけでなく、貸駐車場・駐輪場も含まれる。また、建物を無償で会社に貸していた場合や相場よりも低い地代で会社に貸していた場合も、この特例は適用できないので注意が必要だ。