2020-03-06
受取配当金は、企業会計において損益計算書の営業外収益に計上され、利益を構成する。一方で法人税の計算では、法人税申告書において必要な調整をすることで、益金に算入しなくてもよいこととされおり、これを受取配当等の益金不算入制度という。同益金不算入制度によって、対応する法人税等も少なくなる。例えば、法人が他の内国法人から配当等を受けた場合には、株式等の保有割合に応じて一定額を益金に算入しないこととされている。
具体的には、保有割合に応じて、(1)完全子法人株式等、(2)関連法人株式等、(3)非支配目的株式等、(4)その他の株式等の4つに区分され、(1)完全子法人株式等に係る受取配当等はその全額、(2)関連法人株式等に係るものは、受取配当等の額から負債を控除した残額、(3)非支配目的株式等に係るものは受取配当等の額の20%相当額、(4)その他の株式等に係るものは受取配当等の額の50%相当額がそれぞれ益金に算入されないこととされている。
その株式等の保有割合が、ポイントになるのだ。そこで注意したいのは、本来、「非支配目的株式等」に区分しなければならない保有割合5%以下の株式等も、「その他の株式等」に区分してしまい、益金不算入額を過大に計上してしまう場合があることだ。実際に会計検査院からもそのような誤りが散見されるとの指摘があったことから、この区分の間違いについて国税庁が注意を喚起している。
国税庁は、同誤りを防ぐためには、株式等につき「完全子法人株式等」、「関連法人株式等」、「非支配目的株式等」に該当するかを確認した上で、いずれにも該当しない場合に「その他株式等」とするといった手順で判定するよう促している。受取配当等の益金不算入制度は、法人税の申告に当たってはよく出てくるもので、これを適用することにより税金は少なくなるが、制度を正しく理解して適用することが必要だ。
なお、受取配当等の益金不算入の対象となるものには、一定の受取配当金のほかにも、投資信託、投資法人から受け取る金銭の分配、一定の特定株式投資信託の収益の分配などが該当する。一方、外国法人等から受け取る配当や保険会社の契約者配当金、公社債投資信託以外の証券投資信託の収益の分配、特定目的会社や投資法人から受け取る配当等は益金不算入の対象とはならない。