2020-03-13
年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案が現国会で審議中だ。同法律案は、国民年金及び厚生年金について、社会経済情勢の変化に対応した持続可能な制度を構築するため、基礎年金に対する国庫負担割合の引上げ、保険料水準固定方式の導入その他の措置を講ずるとともに、企業年金について、厚生年金基金制度、確定給付企業年金制度及び確定拠出年金制度の改善措置を講じようとするもの。
この国民年金法等の一部改正法律案の柱の一つに、被用者保険の適用拡大がある。法案には、(1)短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件について、段階的に引き下げること(現行500人超→100人超→50人超)、(2)5人以上の個人事業所に係る適用業種に、弁護士、税理士等の資格を有する者が行う法律又は会計に係る業務を行う事業を追加することなどが盛り込まれている。
個人事業所の場合、現行制度上の適用事業所は、法定16業種に該当する常時5人以上の従業員を使用するものに限られているが、この16業種は、1953年(昭和28年)以来、 一度も見直されていない。士業は法定16業種に入っていないため、従業員が5人以上であっても、被用者保険の適用は任意だった。しかし、非適用業種についても、実態を踏まえた見直しを図っていくべきだとの声が高まっていた。
法案を審議していた厚生労働省の社会保障審議会年金部会の資料では、「特に、5人以上の個人事業所のうち、弁護士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務を取り扱う士業については事務処理等の面からの支障はないと考えられ、さらに他の業種と比べても法人割合が著しく低いこと、法人化に際して制度上の制約があることなどから、適用業種に追加すべきである」との意見が明記されていた。
士業の全事業所に占める個人事業所の割合は約90%であり、常用労働者数5人以上の個人事業所の割合は12.3%と、他の業種に比べて高い。対象となる士業は、社会保障審議会年金部会の資料では、弁護士・税理士・社会保険労務士のほか、司法書士、行政書士、土地家屋調査士、公認会計士、弁理士、公証人、海事代理士の10士業が記されている。この士業に対する被用者保険の適用拡大は、2022年10月1日の施行を予定している。