2020-05-28
新型コロナウィルスの感染は減少してきたが、旅行や飲食店のキャンセルが相次ぎ経営に打撃を与えている。事情が事情だけに、キャンセル料は取らない事業者も多いと思われるが、キャンセル料を受け取った場合に税務上の処理に戸惑う事業者も少なくない。キャンセル料も店(会社)の収益になり、所得税や法人税の課税対象になるが、消費税については納税額に影響してくるので取扱いは重要だ。
いわゆるキャンセル料といわれるものの中には、解約に伴う「事務手数料」としての性格のものと、解約に伴い生じる「逸失利益に対する損害賠償金」としての性格のものとがある。事務手数料ということであれば、これは役務提供の対価となるので消費税の課税対象となる。例えば、航空運賃のキャンセル料などで、払戻しの時期に関係なく一定額を受け取ることとされている部分の金額は、解約等に伴う事務手数料に該当し課税の対象になる。
これに対して、逸失利益に対する損害賠償金としてのキャンセル料は、本来得ることができたであろう利益がなくなったことの補てん金だから、資産の譲渡等の対価に該当しないため課税の対象とならない。例えば、航空運賃のキャンセル料などであっても、搭乗区間や取消時期などにより金額の異なるものは、逸失利益等に対する損害賠償金に該当するので課税の対象とならないとされている。
キャンセル料に対する消費税の区分は上記のとおりだが、現実的には、世の中で「キャンセル料」として徴収されている費用の多くは消費税がかからないと思われる。例えば、航空券の予約をキャンセルした場合、多くの航空会社では「払戻手数料」と「取消手数料」が発生する。このうち、「払戻手数料」は払戻しの事務手続きに対する手数料なので消費税が課税されるが、せいぜい数百円程度しか請求されない。
一方、「取消手数料」は運賃に対する一定割合もしくは一定金額が徴収されるのが一般的なので、払戻手数料と比べると高額になる。こちらは、名目上、取消“手数料”となっているものの、実態は航空会社の逸失利益に対する補てん的な性質のものなので、消費税は不課税となる。つまり、「逸失利益の穴埋め」という趣旨であれば、資産の譲渡等の対価には当たらないため消費税の課税対象にはならないわけだ。
ところで、なかには“事務手数料”的な部分と“損害賠償金”的な部分を一括して「キャンセル料」として徴収するケースもある。例えば、ゴルフ場の予約をキャンセルした際に受領するキャンセル料などで、事業者がその全額について事務手数料に相当する部分と損害賠償金に相当する部分を区分することなく一括して受領しているときは、その全額を不課税として取り扱うこととされている。