2016-12-01
会計検査院は、2015年度決算検査報告で、国外にある中古等建物の減価償却費の算定方法が建物の現状に適合していないとして、財務省に見直しの検討を求めた。国外にある建物を取得して不動産事業に使い、多額の減価償却費を計上して損益通算により不動産所得に損失を出すことで納税額を減らすケースが背景にある。減価償却資産の減価償却費は法定耐用年数を基に計算するが、中古資産については法定耐用年数に代えて、一定の場合は簡便法により得た年数とすることができる。
簡便法では、(1)法定耐用年数の全部を経過した中古資産は、「法定耐用年数の20%」、(2)法定耐用年数の一部を経過した中古資産は、「法定耐用年数-経過年数(新築時から取得時までに経過した年数)+経過年数の20%」で、耐用年数を算定する。この簡便法により法定耐用年数の全部を経過した中古の住宅用建物の耐用年数を算定すると、たとえば木造等(法定耐用年数22年)は4年に、鉄筋鉄骨コンクリート造等(法定耐用年数47年)は9年になる。
そして、簡便法は、資産が国内にあるか国外にあるかを問わず適用される。一方、住宅の平均寿命を海外と比べると、日本の約32年に対して、米国は約66年、英国は約80年と日本よりも長期間使用されている実態がある。そこで会計検査院では、麹町署等10税務署から提出された2011年分~2013年分の不動産所得に係る決算書を基に、国外及び国内に所在する不動産事業の用に供している建物の取得年月・耐用年数・減価償却費・賃貸料収入等を比較分析した。
その結果、減価償却費を計上していた建物の耐用年数40年超が国内は53.5%と過半数を占めたのに対し、国外は14.4%、一方、10年以下が国外は46.6%と約半数に達したのに対し、国内は1.8%に過ぎなかったことが判明。また、中古建物の減価償却費を賃貸料収入と比較すると、国内に所在する9割が賃貸料収入の半分以下だったのに対し、国外は8割が賃貸料収入を上回っており、中には、賃料収入の10倍を超える状況となっている中古等建物もあった。
これらを踏まえ、会計検査院は、国外の中古等建物では簡便法により算定された耐用年数が実際の使用期間に適合していない恐れがあると認められ、そして、賃貸料収入を上回る減価償却費の計上により、不動産所得の金額が減少して損失が生じ、損益通算により所得税額が減っていると指摘。簡便法により耐用年数を算定する場合に用いられる割合は、1951年(昭和26年)に定められて以来現在まで変わっていないとして、国外にある中古の建物に係る減価償却方法の見直しの検討を求めた。
会計検査院の指摘は↓
http://www.jbaudit.go.jp/report/new/all/pdf/fy27_10_02.pdf