2016-12-09
2016年度税制改正において、2016年4月1日から、事業者が事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に高額特定資産の仕入れ等を行った場合には、その高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の翌課税期間から、その高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間においては、事業者免税点制度及び簡易課税制度を適用しないこととされた。
高額特定資産とは、一の取引の単位につき、課税仕入れに係る支払対価の額(税抜き)が1000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいう。また、調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で、建物、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で消費税等を除いた税抜価格が100万円以上のものをいう。
例えば、A社が賃貸用マンションを2000万円で購入し、その購入した日の属する課税期間の消費税の確定申告を一般課税で行っており、A社のその課税期間及びその翌課税期間に係る基準期間における課税売上高が1000万円以下のケース。A社は、その賃貸用マンションを購入した日の属する課税期間の初日から3年間は、消費税の納税義務は免除されず、原則として一般課税により消費税の確定申告を行う必要がある。
ちなみに、2010年度の税制改正においては、課税事業者選択届出書を提出した事業者と新設法人(基準期間がない期首資本金1000万円以上の法人)が調整対象固定資産を取得した場合には、その取得した課税時期から最低3年間は簡易課税制度及び事業者免税点制度が適用できなくなっている。これは、それ以前に横行していた「自販機スキーム」を封じるためといわれていた。
「自販機スキーム」とは、通常、家賃収入は非課税売上のため、賃貸アパート等の建築費に含まれる消費税の仕入税額控除はできないが、自販機を設置してその年に課税事業者を選択すると、課税売上割合100%となり、課税売上(自動販売機収入)に係る消費税を差し引いた賃貸アパートの取得価額に含まれる消費税の還付を受け、3年目に免税事業者等を選択して仕入税額控除の調整対象からはずれ、1年目に受けた還付を丸々享受するもの。
今回の改正は、PFI事業等を実施するために設立された特別目的会社(SPC)が、建物を取得して還付を受けてから、すぐ簡易課税制度を適用してその建物の売却代金に係る消費税についてみなし仕入率相当分を控除するというスキームを封じる目的といわれている。PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)」とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う新しい手法だ。